「努力」の仕方を考える | masamasaのブログ

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リハビリのこと、庭のこと、コペンのこと

高齢者のリハビリテーションで考慮しなければならないことは、「努力できない」ことだけではありません。

その方は、83歳になる男性の利用者様です。


長年学校教員として働き、中学校の校長先生まで務めたそうです。教育とは何かを深く考え、生徒・教員の指導に燃えるような、立派な校長先生だったようです。
数年前に脳梗塞を患い、動きにくい身体になってしまいました。ご本人はそのことを非常に気にしていて、何とか良くなりたいと、熱心にリハビリに励んできたとのことです。

私が出会った時は、明らかな麻痺はなく、立ち上がる時や急に向きを変える時にふらついてしまうことが問題と思われました。
しかし、それまで受けていたリハビリでは「体力がないことが問題」と言われて、筋力増強運動や持久力向上運動を中心にリハビリをされていました。ご本人の訴えも、「運動をすると息が切れるから、もっと体力を付けたい」ということが主でした。

この方の「体力」の要素を検査すると筋力も持久力もほぼ問題なく、年齢を考慮するとむしろ優秀と言えるレベルでした。それなのになぜ「体力がない」と言われ、本人もそう思うのかというと、「運動をすると息が切れる」からです。実際、ベッド上でできる運動を行っても、数分間で息が切れます。

息が切れるのは体力がないから。努力が足りない、もっと運動をしなくては…おそらくそう考えていたのだと思います。身体は硬く、全身に力が入り、「背中が寒い。運動が足りないから温まらない」と話します。運動を終えるたびに首をかしげて「これじゃ駄目ですね」とつぶやきます。また、「自宅では何をやれば良いでしょうか」と毎回質問されます。

この方には、今までのリハビリプログラムを全てやめること、体力をつけるのではなく、身体を軟らかく、軽く動かす練習をすることで動きやすくなることを伝えました。今行っているリハビリは、身体をひねったり、かがめたりといった単純な動きを時間いっぱい繰り返すだけのメニューです。

このメニューは、思いきり力んだり汗をかいたりといった、目に見える「努力」はしません。そのかわり、自分の身体と向き合い、力を抜くこと、その上で身体を動かすことに「努力」を求めるものです。

この方にとって、力を抜いて動くことは、力を入れて動くことよりも難しく、初めは困惑されていたようですが、段階を踏んでいくことで、徐々に楽に動けるようになってきています。「す~っと息が通る」、「背中が温まる」と感想を述べられるようになってから、高かった血圧も落ち着いてきて、笑顔で運動を終えられるようになりました。

このように、いわゆる「リハビリ」を真面目に捉える方ほど、努力の方向を間違えてしまっている方が多い気がします。理学療法士・作業療法士には、やる気を起こし、努力できるようにするだけでなく、努力できる方には、ご本人の人生に有益な努力の仕方を示していくことが求められていると、感じます。