日大アメフト問題、私の中でどんどん謎は解け、
真実の姿がありありと見えてきています。
いま、再び宮川くんの会見を見て、
それはもう想像ではなく、確信しています。
今から話すことは、恐らくスポーツや武道の指導者、
リトルリーグのコーチなど、
スポーツを通じて子供達の人間教育をしている人々なら
誰でもきっと理解できることだと思います。
※
内田監督・井上コーチがなにをしたかったのか。
それを一言で言うなら、
「おとなしい、優しい性格という殻を破って欲しかった」
「闘志を表に出す選手になって欲しかった」
ということだったのだと思います。
そのために彼らは、宮川くんに「直訴」して欲しかったのでしょう。
監督やコーチから何を言われても「わかりました」と言って引き下がる彼に、
「コーチ、俺にやらせてください!」と言わせたかった。
それを引き出すために、タックル練習ではタックラーではなく
ダミーホルダーをやった、というだけグランドを走らせ、
試合数日前から敢えて試合形式の練習から外し、
練習後のハドルで名指しで叱責した。
悔しさを感じさせて「俺を試合に出させてください!」と
自分の口から言わせたかった。
内田監督が「日本代表に行くな」と言ったのが本当だったとしても、
「わかりました」と引き下がって欲しくなかったのだと思う。
「俺は代表メンバーになりたいです」と言って欲しかったのではないでしょうか。
井上コーチは宮川くんを一皮剥けさせたいために、
いろんな策を講じて彼からの「動き」を待ったけれど
どうもそういう反応がなかったので、試合の前の日に、
「1プレー目でQBを潰すなら、試合に出してやる」と監督が言っている、
という話につながった。
「やりますから、出してくださいと、自分で言ってこい」と。
頭を丸めて、というのも、宮川くんが自分でそうした、ということを
監督に思って欲しくて、井上コーチが仕向けた「愛情」だったと思うのです。
※
コーチの中にあったテーマが
「宮川くんのやさしい、控えめな性格の克服」だったから、
「プレーの結果、相手がケガをすることなど考えるな」という意味の発言もした。
(「ケガをさせてこい」ではないことに注意です)
試合後の内田監督の言葉、
「こいつが成長してくれるならそれでいい。相手のことを考える必要はない」
というのも、その意味です。
もちろん、このとき内田監督は、タックルがどんなものだったのか、
知らずに発言しています。
井上コーチが、「宮川くんがやったのと同じことを自分にもやらせて欲しい」
というDLの先輩がいたことを紹介し、「お前にそういうことが言えるのか?」と言った。
お前のそういうところが足りないと言っているんだ、というのも、
つまり、「先輩の直訴」について言っているわけですね。
反則退場後、宮川くんが泣いている時に井上コーチがかけた
「やさしすぎるところがダメなんだ。相手に悪いと思ったんやろ」という言葉も、
同じ意味です。
しかし、宮川くんにはコーチたちが何を望んでいるのか、という真意が
伝わっていなかったので、そういう言葉の「負の側面」をまっすぐに受け止めてしまった。
そういうことです。
宮川くんの会見での、コーチや監督の言葉を、
その裏にあった「狙い」をなしに聞くと、すべて「悪の策略」に聞こえます。
しかし、実際にはそういうことではなかった。
もちろん、なぜそう聞こえるか、というと、
「悪の策略」と受け止めた宮川くん本人が語っているから、です。
だから、監督・コーチの言葉はすべて悪意に聞こえてしまうのです。
※
アメフトでは、「潰せ」という言葉はよく使う。
その部分を、ちゃんと受け止めてみるとどうなるでしょうか。
例えば、宮川くんの会見での「潰せ」という言葉を、
「サックしろ」に変えたら、どうなるのか、やってみましょう。
井上コーチの言葉、
「監督に、お前をどうしたら試合に出せるか聞いたら、
相手のQBを、1プレー目でサックすれば、出してやると言われた。
QBをサックするので僕を使ってくださいと監督に言いに行け」
先輩の言葉、
「井上コーチに、宮川に、アラインはどこでもいいから、
1プレー目からQBをサックしろと言っとけ、と言われた旨を告げられました。」
宮川くんの言葉、
「私は監督に対して直接、相手のQBをサックしにいくので使ってください、と伝えました。
監督からは、やらなきゃ意味ないよ、と言われました。」
どう思いますか?
まったくもって、「アメフトの常識の範囲内」ではないでしょうか?
私がここに書いたことが、「乖離」です。
「サックしろ」でも「タックルしろ」でもいいのですが、
「潰せ」はそういう意味で使われていました。少なくとも、監督やコーチは。
監督やコーチは、宮川くんの口から「俺を使ってください!」と言わせたかった。
なかなか自分の殻を破れない宮川くんが、自ら直訴するきっかけを与えるために、
「相手のQBを潰すから」というネタが出てきた。
極論で言えば、「直訴した」という段階で、もう監督は「合格」を与えていた。
「がんばってこいよ」という意味の「やらなきゃ意味ないよ」なのです。
もちろん、そこでいう「やる」とは、反則タックルのことではありません。
1プレー目からQBサックを狙うような、闘志あふれるプレーです。
監督とコーチが思い描いた筋書きと現実は
まったく別のものになってしまいました。
その理由は、コーチたちが発したメッセージが、
意図通りに宮川くんに伝わらなかったことが原因です。
※
ここで、日大が関学に対して送った再回答書を改めて見てみます。
そこに、すべてが書いてあります。
それを受け入れられないのは、先入観があるから。
ただそれだけの理由に他なりません。
<ここから>
現状では、指導と指導を受ける側の認識の乖離と考えております。
弊部選手もいわば追い込まれて今回の行動へ繫がったものです。
このような状態に追い込んでしまった責任は指導者にあり、
本人には責任はありません。フィールド上の責任はすべて監督にあります。”
※
フィールド以外で起きた「対応の悪さ」などは、この件と本質的に関係ありません。
「日大の体質」と、このタックルの件はまったく関係がないので、
議論はあくまでも、監督・コーチが悪質なタックルを命じたのか、否か、だけが
問題であることを、再認識していただければ、と思います。