コンプライアンスは、終わりの始まりです。

 

 

日大アメフト問題で、最も恐れていたことが起こりました。

日本アメリカンフットボール協会が、企業でもあるまいに、

「コンプライアンス」などと言い出したのです。

 

今の社会では半ば当たり前になっている「コンプライアンス」ですが、

実際にコンプライアンスと声高に叫んで、いいことになっている「現場」はなく、

すべての人が苦しみ、その場の人間関係から「ぬくもり」を奪っていきます。

 

ルールを守ることは当たり前ですが、

それを目的化すると、人間には必ず歪みが生まれます。

 

そんな企業の中で起きている悪しき考え方を、

学生スポーツの世界に入れ込むなど、

もはや、フットボールの世界も終わりかな、と感じます。

 

コンプライアンスとは、常に、組織の上層部の言い訳です。

 

人間は完璧ではなく、ミスや過ちは必ず起こります。

コンプライアンスはつまり、そのようなことの責任を、

ただ現場に全面的に負わせるための、資本主義の弊害です。

 

あなたの周りに、「コンプライアンス」で喜んでいる人が、

一人でもいますか?

 

私の周りにはいません。

 

コンプライアンスは現場を殺伐とさせ、

上層部と現場の乖離をさらに深化させます。

 

昨日、「教育」について書いたのは、

こういう方向に走って欲しくないと思ったからでしたが、

ついに、「この言葉を持ち出したか」と、落胆しています。

 

 

世の中で、この一連の日大アメフト問題をネタにしている人で、

本当に日大のことを考えている人は、いったいどれくらいいるのでしょうか?

 

先程も、ネット上で、内田さんのピンクのネクタイを批判している人がいて、

そのレベルの低さに心が折れそうになります。

 

そういう発言は、「私は人を外見でしか判断しません」

と宣言しているようなもので、

そのような感受性の欠如が、コトを大きくしているのです。

 

もし単身で会見した宮川くんが、金髪で舐めた口調だったら、

同じ証言の内容でも、皆さんの印象はちがったはずです。

 

でも、事実は何も変わらないのです。

 

それほど人は「印象」に左右されてしまうものなのですが、

そこは一人一人が自分の感情と戦って、

一生懸命流されないように頑張らなければ、

罪なき人を罪びとにしてしまうし、

明日はあなたの順番が回って来てしまうかもしれないのです。

 

これは人の一生を左右する出来事なのですから、

表層的な印象だけで決めてはいけないのです。

 

あなたが同じ目にあったらどう感じるか。

そのことを、リアルに想像してみてください。

 

 

私としては、今や、宮川くんがチームに戻るかどうかよりも、

現役の四年生が最後のシーズンにフットボールができるのか、

ということがいちばん気になります。

 

秋のリーグ戦に参加するには、

早々に第三者委員会による「原因究明」と

具体的な「再発防止策」の提示が必要です。

 

再発防止策を考えるには、その前提として原因の特定が必要であり、

その原因いかんによって再発防止策の内容が変わるはずです。

 

では整理しましょう。

まず、何が再発してはいけないのか?

 

これは、宮川くんがやったような悪質な危険行為です。

そして、そのようなことが発生する土壌ですね。

 

では、宮川くんは、なぜあの危険行為をやったのか?

 

宮川くんはコーチに命令されたといい、

コーチたちは、あんなことをやれとは言っていない、と主張している。

 

学連は「コーチたちは嘘をついている」として、

反則指示があったとしている。

 

その場合の再発防止策は、監督やコーチが

選手たちに危険行為を行う指示をさせないための策、ということになります。

 

つまり、理不尽な指示を出せないようにするルールや、

そのような指示に学生が抵抗できるルールをつくる、ということです。

 

しかし、勘違いしてはいけないのですが、

大学生というのは20歳そこそこで肉体的には十分大人ですが、

精神的にはまだまだ未熟だし、人生経験も浅いので

彼らが言っていることがすべて正しい、という判断は

むしろ教育者としてのオトナの責任の放棄です。

 

フットボールの世界で、

コーチと選手は指示命令系統で管理されていなければならず、

それはプロフットボールでも同じです。

 

そこに「人間教育」というテーマまで入ってくるわけですから、

綺麗事だけですむと思う方がまちがいだ、というのが現実です。

 

米国プロフットボールで、現在の王朝を築き上げている

ニューイングランド・ペイトリオッツのビル・ベリチック監督は、

選手の精神的なあり方にもとても厳しく、

ミーティングや練習に遅刻した選手はエース格でも試合に出さないなど、

徹底した教育的態度を貫いています。

 

言いたいのは、コーチと選手は、人格としてはもちろんイコールですが、

立場としては決してイコールではないし、

イコールになっては、チームとして成立しないのです。

 

そんなことを日本大学だけに求めるのは甚だおかしな話で、

そのようなことをルール化するなら、少なくとも関東学連に所属する

全チームに対して適用しなければならないでしょう。

 

 

宮川くんの主張に対して日大側の主張では、宮川くんが破壊行動をとった原因は、

「コーチの伝えたかった意味が、選手にまちがって伝わったこと」なので、

これはディスコミュニケーションの問題になります。

 

そうなると、選手とコーチがしっかり意思疎通できるにはどうするのか、

というのが再発防止策になるはずです。

 

その前提として、「コーチが悪巧みをしていたわけではない」

というところまでの合意が必要になります。

 

しかしいま、学連は「コーチは嘘をついている」とし、

「コーチのよる反則指示」が原因だと認定しているので、

仮に第三者委員会がコミュニケーションの問題が原因だとし、

その再発防止策をチームが提示したとしても、それを認めないでしょう。

 

そうなると、事態は収拾せず、いたずらに時間だけが過ぎてしまうことになるので、

この秋のシーズンに現役に試合をさせるためには、

日大側は、「コーチが反則指示をしました」と言うしかないのです。

 

しかし、これは不当なことです。

関東学連は、日大の現役たちを人質にとって、

コーチ陣に、むりやり自供させようとしているのと同じ図式だということです。

 

周りは反則指示をしたと決めつけていますが、

本人たちが「あくまでも指示はしていない」というのだから、

もっとその発言に対してもフェアに扱うべきです。

 

少なくとも、ここまで追い詰められても「指示はしていない」と主張する理由は、

しっかりと聞き、いいぶんとして認める必要があります。

 

その上で、今回の悪質タックルがなぜ起きたのか、という原因を割り出すべきです。

 

「やっていない」と主張する人に、無理に「やった」と言わせるとなると、

これは人権問題にも発展しかねない状況になってきます。

 

宮川くんの会見で、印象ひとつで態度がコロコロ変わるのが世論です。

関東学連が日大コーチ陣の人権を無視しているとなれば、

一歩間違えれば、こんどは関東学連が槍玉にあげられることも考えられます。

 

そんな泥仕合にするよりも、早く日大の四年生のことを考えてあげるべきです。

 

ちがうでしょうか?

 

人生は一度しかなく、大学四年の一年は、たった一回しかこないのです。

 

ここまでくると、ただの日大いじめがしたいだけなのか?と勘ぐってしまいます。

いったい、大人たちは何がしたいのでしょうか?

 

 

日大の四年生のためになりたいので、届くかわかりませんが、考えてみました。

 

私が思う、再発防止策はこうです。

 

今回の悪質タックルが発生した理由は、

 

1)コーチ陣の、「選手に強いプレッシャーをかける」という指導方針が

  当該選手には合っていなかった。

 

2)そのため、当該選手はコーチ陣の思惑とはちがう方向に

  コーチ陣の言葉を解釈するに至ってしまった。

 

3)その結果、コーチ陣が要求していることは、

  関学選手を負傷させることが目的だと思い、行為に及んだ。

 

補足として、今までこのような指導方針が

今回のような事例に結びついたことがなく、したがって、

日大コーチ陣の指導法と当該選手のマッチングが良くなかった、

という可能性が高いと思われる。

 

上記の案件が再発することを防止するために導き出されるのは、

 

1)選手の個性にあった指導方針のバリエーションをコーチ陣が持つこと。

2)コーチが、「選手が何を考えているのか」を

  確認・把握するための仕組みを持つこと。

 

であると考えられます。

 

また、フットボールはコーチ陣の存在なくしてチームとして成立しない、

という側面があり、コーチ陣を一新するということは現実的でないこと。

また、すでに内田前監督を筆頭に、多くのコーチが辞任していることを踏まえ、

 

(1)

現有のコーチでは足りない人材をOB会などが選手を交えて協議して人選し、

その人々が現役選手と面談、意見交換をし、

最終的に、各コーチのポストについて、現役選手たちが承認する形で

コーチングスタッフを決定してはどうか。

 

(2)

その上で、コーチと選手が話し合い、

自由に意見を聞くためのパートミーティングを毎日開き、

コーチはそこで得た情報や、指導方針・選手のメンタル面を含めた

状況の情報共有のためのコーチミーティングをできるだけ毎日行うこと。

 

(3)

コーチングスタッフにメンタル面でのケアを専門的に行う人材を加えること。

 

(4)

シーズンオフなどに、

コーチ達が、他の競技も含めた指導者にヒアリングを行い、

指導方法のバリエーションの知見を広め、コーチとしてのスキル向上に努めること。

 

上記の4施策で、今回のようなアクシデントは防げると思います。

 

何より、コーチングスタッフの選定が急務ですが、

そこについて、第三者が、どんな理由をもって「OK」を出せるのか、

そこがネックになるので、選定の工程に現役を交える、という異例の選定方法を提案してみました。

 

フェニックスの現役諸君、コーチの皆様、OBの皆様、

もし、このブログを読んでいたら、参考にして見てください。

 

本当の敵は誰なのか。何なのか。

 

それは、「分断」です。

あなた方の分断を発生させるすべての人々です。

 

今、何をすべきなのか。

 

フットボールで養った叡智を駆使して、

冷静に分析し、判断して、行動してください。

 

心から、応援しています。