つづきです。

 

(質問4)

ケガをさせろとは言わなかったが、結果ケガしても良い。

少しなら違反になっても良いから、と最初から思っていたなら、

やはりそれはいけないのではないか。

やった結果反則、というのと、あらかじめ反則まがいでも

行ってこいでは全然ちがうと思うが。

 

 

「コンタクトスポーツ」に馴染みのない人には

どうしても認めにくい場合があると思いますが、

人と人が体をぶつけあう、という競技では、自分がケガをしないためにも、

ものすごく気合を入れておかなくちゃいけないのです。

 

例えば相撲の立ち合いを想像してみてください。

 

防具も何もつけていない人間同士が、思いっきりぶつかり合うわけですね。

あんなこと、生半可な気持ちでいたら、死んでしまうかも知れません。

恐怖心を拭うためにも、自分を鼓舞するということは必須です。

 

フットボールもまったく一緒です。

 

ですから、基本的にこのスポーツに参加している全員が、

ものすごいファイティングスピリットを要求される、ということをご理解ください。

それは、自分の身を守るためでもあるのです。

 

先ほども書いたように、反則プレーと反則ではないプレーは、

いつも紙一重なのです。

だから、「反則を犯してしまうことを恐れずいけ」というのは、ありなのです。

 

コーチがそのように要求することは、まったくもって、ありなのです。

 

が、、、そこで想像しているシーンというのは、

例えばQBがボールを投げた瞬間に止まれずにタックルしてしまって、

ギリギリでレイトヒットになる、というものです。

 

そんなシーンは、NFL中継を見て入れば、何度となく出てきます。

もちろん、危険なことではあるので、反則にはなります。

が、これをゼロにしようとしたら、コンタクトスポーツとして成立しないでしょう。

 

今回の宮川くんのプレーは、QBがボールを投げ終わって2秒後。

完全にプレーが終了後の反則でした。

 

これはですね、言って見れば、試合に出ていない、

サイドラインに立っている選手を突然フルタックルするようなもので、

すでにプレー中の「レイトヒット」という範疇でもないわけですね。

 

相手にケガを負わせることを目的にした「スナイパー」行為です。

 

同じ」「反則」でも、まったく性質がちがう、ということがわかるでしょうか?

 

日大のコーチ陣が容認していたのは、

相手でも許せる範囲内の、許容できるファウルなのであって、

あんな「殺人行為」まで含んでいるはずがない。

 

しかも、コーチ陣は「反則せよ」とは言っていないのです。

「思い切りいった結果、万が一反則になってしまっても、

 今回は責任を問わないから、思い切りいけ」と言ってるだけ。

 

その指令を受けて「反則行為で、相手を怪我させなければ」と思ったのは、

やはりどこかで誤作動が起きたということなのです。

 

誤作動が起きた原因はさぐらなくちゃいけないし、

選手を誤作動させたのは、あくまでもコーチの責任です。

日大側は、すでにちゃんとそれを認めて謝罪している。

 

私は一貫して、そういうことを言っています。

 

 

この一連の事態について、どうしてもわかっていただきたいのは、

「誰が、誰にむてけ、何をしようとしていたのか」という

「出来事の構造」です。

 

当初の報道では、「日大が、関学にむけて、QBを負傷させようとした」

という構造だと思わされていたわけです。

 

もう少し細かく言うと、

「日大のコーチが、宮川くんという選手をつかって、

 関学のQBを負傷させる計画を企てた」

「その後、コーチたちは、この件を実行犯である宮川くん一人の責任にした」

 

そう思わされていませんか?

メディアがそう言っているから。

 

けれど、実際に起きていたことは、

「日大のコーチが、日大の選手を成長させるために、奮起を促した」

のであって、そもそも関学というファクターはあまり関係がなかったわけです。

 

ところが、コーチが「奮起を促すやり方」を間違えてしまったため、

誤った結果として関学選手にケガを負わせてしまった。

 

そういうことなので、当初私がショックにおぼえた、

「日大フェニックスの中に関学の選手を潰そうという企てがあった」ということは

まったくなかったわけですね。

 

つまり、ベクトルは日大というチームから関学というチームに向いていたのではなく、

日大のコーチから、日大の選手に向いていた、ということです。

 

この構造を理解すれば、全体の見え方が変わってくるはずです。

 

見えてきたでしょうか。

見えれば、きっと、ハッとすることでしょう。

 

当初、日大を批判していた私が、そうなったように。