各所でのネット上での議論を見ていて、

非常に大事な部分が抜け落ちてしまっているので、

改めて書いておきます。

 

これは、宮川くんと、コーチ陣、その両方の会見から

組み立てた試合の序盤です。

 

○試合の第1プレーで、宮川くんはプレー終了後の関学QBに背後からタックル。

 それで「不必要な乱暴行為」の反則を取られます。

 ここで当該プレーを見ていた井上コーチは、「固まってしまった」

 「でも試合に出してあげたかったから、交代させなかった」

 

○第2プレーのあと宮川くんをサイドラインに呼び、コーチが指示。

 その内容は「キャリアに行け」だったが、

 ずっと「QBに行け」と言われていたので指示の意味がわからなかった。

 これは宮川くん自身の発言です。

 この「コーチ」が誰を指すのか明言されていませんが、DLコーチである

 井上コーチである可能性が高いです。

 そうだとした場合、井上コーチは宮川選手の動きがおかしいことに気づき、

 すぐに対処しているわけで、このことは同時に、

 関学のQBを壊すことを目的に反則指示をする、という意図が

 もともとなかった、ということを裏付けています。

 

○第3プレーで、コーチからの指示の意味が理解できなかった宮川くんは

 再びボールを持たないQBにタックルを行い、

 「不必要な乱暴行為」の反則を受けます。

 

○第4プレーを挟んで、第5プレー。

 宮川くんは関学の選手に暴力をふるい、資格没収(退場)となる。

 この行動の理由は、「闘争心がないと言われていたから」

 

 

ものすごく重要なのが、2プレー目のあとにコーチの指示があった、

という事実です。

しかもそこで「キャリアにいけ」と言われた。

 

これはつまり「ボールを持ってるやつをタックルしろ」という意味です。

ちゃんと丁寧に言えば、

「ボールを持っていないQBじゃなくて、ボールを持ってる選手をタックルしろ」

という意味です。

この指示は、ことの流れから推測すれば、冒頭のボールを持たないQBへの

ラフプレーを否定しているということなわけです。

 

それでも、指示の意味がわからなかった宮川くんは、

3プレー目にも再びボールを持たないQBにタックルにいってしまった。

 

 

私がここで明らかだと思うのは、

コーチと選手の間に解釈の乖離があった、ということです。

それと、宮川くんはプレッシャーから物事をちゃんと判断することが

できない状況に陥っていた、ということ。

 

そのふたつです。

 

悪質な反則タックルが実際に行われたことは事実だとして、

その行動の原因として、監督やコーチからの

「反則をして関学のQBに怪我をさせろ」という指示があったかどうか、ということ。

 

そんな指示をしていれば、2プレー目のコーチの行動はないはずなのです。

 

私が「反則指示はなかった」とする根拠はここです。

そのことを、どうか皆さま、忘れないでください。

 

 

ではなぜ、宮川くんはそういう指示があったと、

あんなに具体的に語ったのか?

そういう問題があります。そこは正直、心理的な部分が絡むので、

私にもわからないのですが、

人はよくかんちがいをしてしまうものです。

 

これはこういうことだろう、と先入観があると

何もかもがそう聞こえてしまう、みたいなことがあります。

 

そんな経験、ないですか?

 

何かをきっかけに、

「自分はQBを怪我させないと試合に出られないのだ」と解釈し、

そう強く思い込んだ宮川くんには、

あらゆることがそれに紐づけられて解釈されたということは想像できます。

 

もちろんその責任は、

そう思い込むほどプレッシャーをかけたコーチ陣にあります。

 

その過失について、内田監督も井上コーチも逃げていません。

ちゃんと受け止めて、辞任という形で責任をとっている。

 

けれど、「反則指示をしたのか?」という一点に関しては、

そんな指示はしていない以上、指示したとは言えないし、

言う必要もないと思います。

 

「第1プレーでQBつぶしてこい」と言ったとしても、

それは「反則をしてこい」という意味ではなく、

「堂々と相手と勝負して、ぶちかましてこい」という意味である以上、

コーチの意図として反則指示はしていない、ということなのです。

 

なので、「反則指示はしていないが、責任は監督にある」になるし、

「悪質タックルが起きた原因は、指導者の指示と選手の受け止め方の乖離」になる。

その乖離の責任は、指導者にある、と認めているのだから、

監督もコーチも逃げていないし、問題の核心を明らかにしているはずです。

 

この「悪質タックル」の一件に、「首謀者はいなかった」ということです。

すべての案件に「犯人」がいるわけではないのです。

 

もう、犯人さがしは必要ないし、同じ労力は

再発防止策に向けるべきだと、私は考えます。