ネットの世界でギター好きが集まると、

必ずギターの「テンション」について議論になります。

 

これから書く内容は、今思いついたことではなく、

ずっと以前から私の頭の中にあったことなのですが、

自分の頭を整理するためにも、書いてみたいと思います。

 

予想ですが、とても長くなります。

 

 

まず、最初に言いますが、

ここに書く内容は「テンション議論の決定版」であり、

ここにあることがギターのテンションについての結論です。

 

はっきりいって、圧倒的に自信があります。

 

 

「テンション」とは、弦の張力のことで、

どれくらいの強さで弦が張られているか、ということと、

そこから導き出される「押弦のしやすさ」「チョーキングのしやすさ」といった

演奏性に話題が及びます。

 

ま、ギタープレイヤーなら聞いたことある言葉ですよね。

 

 

で、

 

まず、「テンション議論」とは何か、と申しますと、

このテンションの解釈について、大きく二つの意見があるのです。

ひとつは「ギターのテンションは弦の太さ・長さと調律によって物理的に決まっているものであり、

調整はできない」とする意見と、

「ギターのテンションはブリッジとテールピースの角度の関係などによって

調整することができる」というものです。

 

結論からいいますと、両方正しいですが、

「テンション」が何を指すか、によっては正しくなくなります。

 

 

なぜ、私が自分の意見にこんなに自信があるか、というと、

私は最初、「テンションは調整可能だ」という意見だったのですが、

いちど「物理的現象であるテンションを調整することはできない」

という意見にかわり、

それがさらに「調整できる」という結論に達した、という経緯があるからで、

どちらの人の意見も気持ちが理解できるのです。

 

 

まず、「テンション」という言葉が二つの意味を持っているのですが、

(そして、ここに大きな問題があるのですが)

ひとつは「弦の張力」として使われる場合。

これはギター製作者の方などが使用しますよね。

文字通り、弦が、どれくらいの強さで張られているか、という意味です。

もうひとつは「実際にギターを弾くときに指先で感じる弦の硬さ」です。

これがユーザーの間で俗に言われる「テンション」で

ギタリスト同士の会話の中で一般的に使われるのは

こちらが多いと思います。

 

そして、前者の解釈なら「テンション」は固定されており、

後者の解釈なら「テンションは調整可能」です。

 

まず、前者から見ていきましょうか。

 

 

ここでいうテンションは、弦の張力ですね。

この場合にテンションを決めている要素は、

弦の太さ(ゲージ)、ブリッジからナットまでの長さ(スケール)、

そしてチューニングです。

 

この場合でいうテンションが高い状態は

ペグがいっぱい回っていて、弦がピキピキに張ってある状態。

低い状態はペグを緩めて弦がべろんべろんの状態と理解しましょう。

 

例えば、同じ弦の太さの場合、チューニングする音程が

低ければ弦を緩めてべろべろ方向にするし、

音が高ければその逆ですよね。

 

仮に6本の弦、すべてに3弦ようの弦を張って

チューニングしたと考えた場合、

ちょうどいいテンションなのは3弦だけで、

それより低音の弦はどんどんテンションがゆるくなり、

1、2弦はかなりきついテンションでチューニングすることになりますよね。

 

逆に、音程を固定して、弦のゲージを変えた場合、

例えば6本の弦をすべて3弦と同じGにチューニングしたら、

6~4の低音弦はめちゃくちゃ強く弦を張ることになるし、

1、2弦はゆるゆるになりますね。

 

このことから、張力が同じであれば

スケール(ブリッジ~ナットまでの距離)が長いほうが

音が低くなるということもおわかりいただけるでしょう。

(ベースギターのスケールが長いのはこのためです)

 

ここでいうテンションはある長さの弦を、ある音程にチューニングした場合の、

物理的な弦の張力なので、

これはどんなギターであっても一定です。

スケールと弦のゲージが同じであれば、(あと材質も)、

これは決まっていることなのです。

 

この考えで例えばテンションをゆるくしたかったら、

方法は二つしかありません。

 

弦のゲージを細くするか、ギターのチューニングをダウンチューニングにするか。

(スケールを短くする、というのもあるのですが、非現実的ですね)

それだけです。

 

ただ、ここでいうテンションというのは、

あくまでも「ある音程にチューニングされた弦にかかっている力」のことですね。

ここでいうテンションが、そのままギターのテンションに置き換えられるのは、

弦を押さえることのないスライドギターと

ちょっと譲歩して、弦をブリッジとナットのところでロックしてしまっている

所謂フロイドローズのようなギターで、しかもアームがついていない(そんなのない?)だけです。

 

「ギターのテンションは固定されているものだ!」という意見の人の考えは、

ここで止まってしまっているのです。

例えば、この状態で1音チョーキングできるところまで弦を引っ張るとして、

バネはかりなどでそのときに必要な力を測定したら、

それはどのギターお同じになるでしょう。

 

しかし、ここからが大切なのです。

 

ギターの弦は「ナットからブリッジ」までではなく、その前後にも存在していますね。

レスポールタイプのギターでいえば、

ブリッジのコマからテールピースまで、とナットからペグまで。

ここにも弦はあるのです。

 

例えば、弦をチョーキングする際、弦は伸びているわけですが、

ナットからブリッジまでの部分だけが延びているのではなく、

先ほど言った部分も含めてすべて伸びているわけです。

(トレモロユニットのついたギターをお使いなら、

 ナットの手入れをしますよね。なんのために手入れするかは、おわかりでしょう)

 

つまりチョーキングすると、弦のうち、ナットより外側にあった部分が

ナットの内側に、ブリッジのコマより外にあった部分も、その内側に引き寄せられるのです。

ナットとブリッジのコマの上を滑りながら・・・。

 

そして、チョーキングが終わると、またナットとブリッジのコマの上を滑って

元にもどるわけですよね。

 

そうなると、そこの滑りの悪さや抵抗が、

チョーキングのしにくさなどとなって指先に伝わるわけです。

 

では、滑りが悪いとはどういう状態でしょうか。

ブリッジのコマ部分で言えば、それは弦がどれくらいの急角度で

ブリッジのコマに押さえつけられているか、ということに左右されるのです。

 

例え同じ張力で弦が張られていても、

ブリッジのコマにかかっている力は弦の角度によって異なっているのは、

誰も異論はないでしょう。

角度が極端に浅ければ、チョーキングのときに弦がブリッジのコマから

落ちてしまうことがありますよね。

 

弦を押さえつける力が弱いためです。

 

つまり、ブリッジとテールピースの相対的な高さの違いにより、

ブリッジのコマ部分にかかる力が変わり、

チョーキングした際の弦そのものの伸縮のしやすさに

影響を及ぼしているのです。

 

物理的な現象としてです。

人の感覚の話ではありません。

 

ここ、肝心です。

 

 

これは当然、ナット側にもいえることです。

弦はチョーキングのたびにナットからペグ部分までも

伸び縮みしているのです。

 

厳密にいえば、ペグポストに巻かれている部分も無関係ではないのです。

 

逆にこのことを考えると、余分に弦の長さがあることは

弦にのびしろを与えてしまうことでもあるわけなので、

ペグポストに不必要に何重にも弦を巻くことは

チューニングの安定性、という面から言うとマイナスなことだとわかるでしょう。

 

 

さて、チョーキングを例にだして今まで話を進めてきましたが、

ギターの弦を指で押さえる行為、というのは、

すごく微細に弦をチョーキングしているのと同じ行為です。

 

もう何を言わんとしているか、おわかりですね。

 

 

ということで、よく言われる意味でいうところの

ギタリストが指で感じる意味でのテンションは、調整できます。

 

 

ただ、これは調整できる、というだけで、

満足のいく調整ができる、とは言い切れません。

 

 

すごく気にしている人には

驚くほど効果的に調整できるかも知れませんし、

あまり違いを感じない人もいるかも知れません。

 

 

今まで書いたことは、物理的な事実です。

 

 

で、ここからは私の意見ですが、

ギターのテンションがきついとお悩みでしたら、

いちばんいいのは弦のゲージを細くすることです。

 

だって、チューニングを緩めたら今まで覚えた運指が使えなくなるしね。

 

それがいちばん、どんなに鈍感な人にでもわかる方法です。

 

それでもダメならギター本体の微調整をどうぞ。

でも、この調整はあくまでも微調整です。

 

私はかなりギターの状態を気にする人間なので

気づくと思っていますが、効果がないと感じる人も多いでしょう。

 

 

ちなみに、ギターの弦を太くすると音が太くなる、と

通例いわれていますが、これは厳密にいうと違います。

 

同じ音程にチューニングする場合、

弦が太いほうがキツクペグを巻く必要があります。

 

そうなると、物理的にテンションが高くなりますよね。

テンションが高い弦というのは、

緩い弦にくらべて早く弦振動が終わる傾向にあります。

強く引っ張られているわけだから、当たり前です。

 

そうなると、今まで同じ音量、同じサスティンを得るには

今まで以上に力いっぱいピッキングする必要が出てきます。

 

ですから、結果的に音のアタックが強くなり、

アンプを通した音が太くなるのであって、

それは結果論なのです。

 

 

 

さ、これでもうテンションについて議論する必要はないですね!

 

 

皆さん、今日から何の迷いも無くギターを弾いてください!

 

 

 

※ちなみに私が最後にテンションについての意見が変わったのは

大阪のギタービルダーでいらっしゃるJoe Forestさんの掲示板で

Joeさんが説明されていたからです。

できるだけ自分の解釈と自分の言葉で書きましたが、

同じような表現をしている場合があるかも知れません。

ご了承くださいませ。