こんにちは、受験パパ@NAGOYAです。

このところ、連載しております「日本の教育、かくあるべし!」です。
今回はその第13弾となります。

今回は、「『学習指導要領』なる絶対的な基準」についてお話したいと思います。
なお、今回は内容が複雑かつ広範囲であり、しかも私自身が勉強しなければならないことが実に多かったため、この記事の執筆にはかなりの時間がかかってしまいました(といっても、何回推敲しても内容がいまだに薄い・・・)。

「学習指導要領」は、教育基本法及び学校教育法で定められた教育方法を「具体的な実践内容」として規定したものです。
もう少し固く、正式な言い方をすれば、「文部科学省が告示する初等教育および中等教育における教育課程の基準」となります。
 

法令上の直接的な根拠となるものは学校教育法施行規則であり、学校教育法、学校教育法施行令の下位に位置付けられた文部科学省の省令です。
具体的には、学校教育法施行規則第52条(小学校)、第74条(中学校)、第84条(高校)などにおいて「教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する●●●●学校学習指導要領」と規定する記載がありますから、文部科学省はこれに基づき、内容を定め、公示しています。
ですから、単なる「教科別の学習マニュアル」ではなく、正真正銘、法的拘束力を持っている公文書と言えるかと思います。

「学習指導要領」が決定していく過程は、なかなか複雑であり、かつ時間も手間も掛かるため、 基本的に「10年に一度」の間隔でその内容を改正していくことになっています。
直近では、小学校は令和2年度(2020年度)から、中学校は令和3年度(2021年度)から、 高校は令和4年度(2022年度)から新しい学習指導要領が「本格適用」されています。 
ですから、大学入試共通テスト(いわゆる「共通テスト」)の入試科目も、この新しくなった学習指導要領の影響を受け、令和7年度(2025年度)入試から大きく変更となります。
一番の話題は「情報Ⅰ」が入試科目に加わることでしょうか。

また、「本格適用」とお話しましたが、いきなり学習指導要領を変更してしまうと、時には余りにも変更内容が大きく違う場合があるので「移行期間」が設定されることが通常の対応です。

「学習指導要領」が決定していく過程ですが、具体的には以下のような手順を踏んでいきます。

  1. 文部科学大臣から中央教育審議会に諮問
  2. 中央教育審議会教育課程部会で議論
  3. 中央教育審議会教育課程部会審議のまとめ公表。このとき、パブリックコメント募集
  4. 中央教育審議会の答申
  5. 学習指導要領改訂案の公表。このとき、パブリックコメント募集
  6. 学習指導要領改訂

なかなか複雑ですね。

「日本人が、日本国(政府)から教育を受ける際の具体的な実践内容」を決めることになるわけですから、これくらいの進捗スピードで、かつ慎重かつ重層的な手順が必要なのかもしれません。
また、手間を掛けるということは、それだけ各方面の様々な意見を吸い上げていくことにもなりますから、一方的な考え方を押し付けることもしにくいこととなります。

こうして完成された「学習指導要領」は、日本の小学校・中学校・高等学校の教育の「根幹」となるものであり、学校は、学校教育法、及び学校教育法規則の規定等に基づき、この内容に則した授業内容で生徒に教えなければなりません。
 

実際の学習指導要領は、その記載が非常に細かく、かつ大変なボリュームがあるため、一人で全ての教科を理解することはかなり難しいと思います。

ですから、基本的に全ての教科を担当する小学校の先生は、教える内容が初歩的なものであったとしても、対応しなければならない学習指導要領は膨大な量に上ります。


一方、例えば、小学校1年生の段階で「国語」という教科の中で何を教えるべきか、が実に事細かく記してあります。

ですから、これさえあれば、大学を卒業できる学力を有していれば、大抵の場合、子供を教えることができると思います。

(子供を「指導できる」とは限らないけれど・・・)

また、全国の学校で使用する「検定教科書」は、この学習指導要領に則して作成されています。
実際の教科書作成の場面では、実に細かい点まで「検定員」に指摘(検定意見)を受けながら、内容の修正を繰り返し、完成させていくそうです。
そういった作業を経ることで、「検定教科書」はより学習指導要領で定められた内容を色濃く反映していくこととなります。

このように、日本国政府(=文部科学省)は、国が一貫して学習内容を指導できるシステムを作り上げ、全国津々浦々の学校まで実質的に「統制」していくことで、日本の教育の均質性、画一性という「強み」を発揮しているものと考えます。

明治維新後、教育制度をイチから整え、「富国強兵」のスローガンのもと、日本人の能力を飛躍的に高める力の源泉が「教育」であり、その手段の一つが今日でいうところの「学習指導要領」であったと理解しています。

とはいうものの、社会は大小のイノベーションを幾度も経て、不連続的に発展していきます。
そして、このイノベーションは「混沌」から生まれること、さらにそれらは「よそ者、若者、ばか者」が発案し、実践していくことが実に多いことから考えると、学校教育界において100年以上、綿々と受け継がれてきた「均質的」、「画一的」教育が重視される時代は終わった、もしくは大きな変革が求められていると思います。

私の意見をお話しさせていただければ、学習指導要領で定めている子供たちに教えなければならない内容は「最低限レベル」の内容であることを今以上に明確化し、より発展的な内容は、地域毎、もしくは学校毎、もっと言えばクラス毎に創意工夫していくことを積極的に求めていくようにしていくべきではないかと思います。
また、その実践内容も、本当に効果があるのか、をしっかり検証するために、実践主体毎に「実践内容と結果」を公表していくべきだと考えます。
そうした中で、効果があった事例は、他の地区や学校が真似ていけばよいと考えます。
 
また、全ての小学校、中学校、そして高校には、学校固有の教育方針だけでなく、(すでに大学では実施されていますが)統一した項目について作成された「カリキュラムボリシー(教科別教授方針)」、「ディプロマポリシー(卒業資格基準・方針)」や「シラバス(教科別教授内容)」を含む学習計画の作成と公表を義務付けることが必要かと思います。
入学試験を行う必要がある学校は、これらに「アドミッションポリシー(入試方針及び合格基準)」がこれらに加わることは言うまでもありせん。
 
このような仕組みを整えることで、学校、各教育委員会、そして文部科学省は、社会(=子供を通わせる親)への「説明責任」をしっかり果たし、常に検証される対象であるべきかと考えます。

このような実践と検証を繰り返していくことで、今後も日本の教育が、常に「良い方向で改善されていく仕組み」が整備されることを願ってやみません。