国家試験に合格して現在では2年間の研修期間がありますが、私の頃はすぐに専攻する科を決めて病院で仕事を始めました。だから外来で基本的な医療手技ができなければならなかったため、毎日必死に練習したものです。同期生同士で処置の練習をした事もありました。その中でも最も大変だったのが耳管処置でした。

 

耳管処置とは、鼻から金属製のカテーテルを入れて耳に向かって送気する処置の事です。基本的には耳管の機能を回復させる目的で行われます。この処置の難しい所は、鼻の奥の見えない所にカテーテルの先を当てる事です。鼻腔内の形には個人差があり、左右でも異なっています。痛くないようにカテーテルを進めて、その先を目的のスポットに持っていく必要があるため難しいのです。いくつかの方法を学びましたが、現在私はそのうちの1つを使っています。

 

まだ医師になって2年目の頃、定期的に県外の病院へ外来診療に行っていました。その時に年配の男性患者様が、この耳管処置のためだけに来院されていました。その方の鼻の中は狭くてカテーテルを入れるのも一苦労でした。もし違う方向に進むと「そこじゃない」とお叱りを受けていました。また送気をしてうまく空気が耳に入っていないと「通っていない」と怒られる始末。しかし思い返せばこのような厳しい指摘をして頂けたからこそ、私の処置のスキルが向上したのだと思えます。

 

 

父の医院に戻った当初、以前から来られている患者様でとても耳管処置が難しい方がいらっしゃいました。この方の処置の時もとても緊張して苦労しましたが、現在ではうまくカテーテルを入れる事ができるようになりました。「〇〇さんの耳管処置を世界で一番上手にできるのは私ですよ」と話すと大きな声で笑われました。その方は今年で100歳になります。まだまだ元気で長生きして頂きたいので、私は耳管処置を続けていくつもりです。

 

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