アッテネータキットの問い合わせに抵抗リストの並びがおかしいとの指摘があったりします。

 

 

http://www.ko-on.co.jp/products/att/pdf/36rkit-info.pdf

お答えとしてはここは間違っていません。


解説:
36Rアッテネータキットの回路はポテンショメータ形を採用し、

抵抗値可変によって減衰量を変化させる構造になっています。

ポテンショメータ形のアッテネータは1ステップずつ可変する(移動する)ごとに
移動位置に接続された抵抗器の値を加算したり、減算したりします。
 

解りやすいように絞り切り(音量最小)から考えますと、、、

まず、OUTPUTとCOMの間の抵抗値を測定するとします。

絞り切り(反時計方向いっぱい)の位置では、抵抗値は0Ωに近い値となっています
ここから時計方向へ回していくに従い、抵抗値が加算されていきます
(ここでは公差等は無視します)。
 

・絞りきりの位置から1ステップだけ時計方向に動かすとR22の抵抗値が測定されます
・もう1ステップ時計方向に動かすとR22+R21の抵抗値が測定されます
・もう1ステップ時計方向に動かすとR22+R21+R20の抵抗値が測定されます
           ↓
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・
           ↓
・もう1ステップ時計方向に動かすとR22+R21+R20+・・・・+R2の抵抗値が測定されます
・もう1ステップ時計方向に動かすとR22+R21+R20+・・・・+R2+R1の抵抗値が測定されます
 つまり全抵抗値の事ですね。

このように1ステップずつ順に加算していきながら音量増になっていく構造なのです。

ここで数値が逆に見えてしまう部分(R16とR15の位置)での抵抗値は、

 

R17の位置: 100Ω+220Ω+240Ω+430Ω+560Ω+680Ω=2230Ω
R16の位置: 100Ω+220Ω+240Ω+430Ω+560Ω+680Ω+910Ω=3140Ω
R15の位置: 100Ω+220Ω+240Ω+430Ω+560Ω+680Ω+910Ω+820Ω=3960Ω
R14の位置: 100Ω+220Ω+240Ω+430Ω+560Ω+680Ω+910Ω+820Ω+1kΩ=4960Ω

 

となります。
このように加算された抵抗値で見ると順に増えていることになります。
単体の抵抗値が違っていても、加算された抵抗値は順に増えていますので、
音量変化も順に変わることになり、機能として問題はありません。


では、なぜ他の並びと違ってココだけ逆なのか、、、ですが、、、

解説資料裏の減衰特性を見てもらうと、
0, 2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 18, 20, 22, 24, 26, 28, 30, 33, 36, 40, 45, 50, 60, ∞
減衰特性は

0dB~30dBまで「1ステップ毎に2dBずつ”減衰量”」が増えています。

30dB~36dBは3dBずつ、
36dB~40dBは4dB、
40dB~50dBは5dBずつ、
50dB~60dBが10dB
と高減衰になるにしたがって1ステップ当たりの”減衰量”が増えています。

 

そして指摘の箇所では2dB増から3dB増へ”減衰値”が変わるポイントです。

 

 

ここで話をややこしく思わせている要因が2点あります。
 

1.ステップ当たりの”減衰値”が大きくなるということは、

  通る抵抗器の抵抗値も大きくなる

 

 ”減衰値”が大きくなった=抵抗値が大きいとなります。

 表で逆転しているのは算出された抵抗値が一つ前の抵抗器の抵抗値より

 大きかった為です。

 

では、他にももっと大きく減衰量が変わったポイントがあるのに何故抵抗値が

逆転しなかったのか。
抵抗値表を見ると0dB~∞まで全体的に見ると加算していく抵抗値は徐々に小さくなる

傾向になっています。
これは高減衰量になるほど変化する抵抗値が小さいということです。

 

2.同じ1dBの変化でも、低減衰量の1dB→2dBより高減衰量の59dB→60dBの方が抵抗値変化量がとても小さくなる

 

50dB→60dBなどは変化する”減衰値”は大きいのですが、
高減衰量域での変化の為に抵抗値の変化量自体はとても小さくなり、一つ前の抵抗器の抵抗値を逆転するまでに至らない値となります。

 

この2点の要因により、1カ所だけ逆転しているように見えたということです。

 

 

 

 

本キットの可変構造が単体抵抗器を切り換えていく構造ではなく、

抵抗器が直列に繋がっていく構造であることをご理解いただければと。

また、不審な点は実際に計算して確認してみるのもよいかと思います。