大きな夢を抱いた事は無い
野球選手やサッカー選手
芸能人やら海外生活やら宇宙旅行
誰もが一度は頭をかすめる憧れ
むしろそんな気持ちに憧れてなのか
色んな人の自伝的な物語を読むのは好きだった
そしてなぜか貧乏生活に憧れた
一億総中流社会で育ち
有名人の若かりし頃を描いた小説を読んで
その頃のテレビの中の人気者達も
貧乏生活の中でハングリー精神が培われたと
よく話していたものだから
おそらく貧乏生活をしなければ
大きな夢など出会えないのだと思い込み
そんな生活をしたいと願った
そんな願いはすぐに叶い
そして未だに叶い続けている
貧乏生活とは
必要な物が必要なだけ手に入らない
当たり前だけれど
そんな生活環境は不便で
便利好きとして過去を振り返っても
それ程トラウマは抱えておらず
逆に言えば言うほどの
貧乏でも無かったという事で
案外とあの時の願いは叶わず
それでも叶ったと錯覚していたのか
とにかく心残りでは無い
むしろ若かりし頃のご都合貧乏生活は
小説の中の世界のようで楽しかった
ただご都合主義が祟ったのか
結局大きな夢というものには出会えずじまい
何の為の貧乏生活なのか
今ではまったく分からないけれど
この生活に必要な能力は
運良く持ち合わせていたようで
人間関係をすべて捨て去った事によって
ライフコストが異次元に下がり
常識的には不便でも
個人的にその不便さを感じる事が
出来なかったばかりに
今では快適に暮らせている始末
そもそも大概の貧乏話しには
誰かにたかってその恩返しの代わりに
成功してから誰かに奢るというのが
一種のステータスになるのに
コミュ障害持ちだから無意識に
人付き合いのコストカットを実行してしまい
案外と食うには困らなかったものだから
政府の賃上げ底上げ政策の波に乗り
底辺ながらも緩やかに
生活環境は右肩上がりに良くなり
失われた時代に一人で
イザナギ景気を味わっていた
周りの人達の態度も
家畜扱いから人間扱いへとシフトして
禁煙が当たり前になる頃には
手書きの報告書は駄目だと言われ
PCを使って作成しろって
そ、それは人の領分でしょうが!と
足掻いてみたけれど
アンタも人でしょと言われて
俺は人間になりたくねぇとゴネた
仕方なく練習して
何とかなりそうだからと転職したら
案外PCを使いこなせていない同僚ばかりで
人も家畜もそれほど違いが無い事を知り
少し拍子抜けしてしまった
なぜ彼らはあそこまで
自分の出来ない事を
こちらも出来ないと怒るのか
ようやく分かった気がした
ただ役割を押し付けたかっただけ
自ら願った貧乏生活は続いていた
けれども職場での拘束時間は減り続け
転職する度に新しい知恵を手にして
スマホと出会って社会システムを知り
試しに失業保険の給付を受けた時
びびび〜んと衝撃を受けた
社会って暖かい
三年すればまた失業保険を受けられる
しかも就労支援やら職業訓練やらと
こんな便利なシステムがあったのかと
目からウロコが落ちて
逆にコンタクトレンズを入れたように
周りの世界がくっきりと見えた気がした
未来に大きな夢などは
描けないけれど
振り返るとその変化は夢のようで
年収は何も変わらないのに
生活環境は右肩上がりに良くなり
今は夢見心地で生きている
あの時苦労を買って
中流から下流へ飛び込んで
自ら貧乏生活を始めて
家畜のように扱われ
その日常に慣れてしまうと
人扱いされるのが鬱陶しくて
成長を促されると逆うって
いつまで子供のままなんだと
自己嫌悪に陥りもしたけれど
この感覚を手にするには
すべてが必要な体験だった
当たり前の中流家庭は
両親の努力の賜物だと気づけた
社会の支えにも気づけた
あの状況でも暮らせていたのは
多くの人達の支えがあったからだった
日記を書いていたあの頃
読み返すと別人のような気がした
確かに書いた記憶はあるのに
実感がなくなってしまった
それだけ自分が変わっている事に気づく
自分自身も支えていた
突然誰かに怒りが吹き出して
止める事も出来なかった時
心の底から後悔したけれど
何度も同じように繰り返したのは
おそらく心の安全装置が
作動したからだった
我慢するのは当たり前
無能が生きるにはそれしかない
そう思っていたけれど
心を限界まで擦り減らしては
何度となく無意識に助けられては
その場から逃げ出した
逃げ出した後の現実
職場を探して面接をしたり
ハローワークへ手続きに行ったり
心を落ち着ける場所で
リフレッシュしたりして
案外と器用に繰り返し
運良く非正規でも仕事は
途切れる事なく
今も続けられているのだから
自分の努力にも助けられている
子供の頃
自分がまともに働いている姿を
想像出来ずに怖くなった
追いかける夢も無く
未来を考えると怖くなるから
考える事から逃げた
夢を抱けないのは
おそらくそのせいだろう
物心が付き始めて
暮らしていた環境が常に変わり
ある日突然家に帰れないと事知り
本当にその後帰れずじまいで
そういうものなんだと思った
今の暮らしが
突然無くなるという体験は
影の様に付き纏い
無意識の中に何が起きても
大丈夫な様に安全装置を設置して
未来には希望を持たないように
言い聞かせているのかもしれない
その癖みたいな感覚が
夢を抱けない原因かもしれない
なにか本当に良い事が
起こりそうだと感じると
逃げ出してしまいたくなる
手にしてから失うよりも
初めから無いほう楽だから
無ければ無いで
何とかなるのは知っているから
幸せでなくても良いと
心のどこかで思っている
それは変えなければならないのだろうか