清掃員を始めて四半世紀
同僚に若いと言われ続けても四半世紀
嬉しくも悲しくもあるという
悲喜交交的な感覚に翻弄されながらも
ピークは過ぎ去ってしまい
最近では慣れてしまって
挨拶のように聞き流している
どこの職場でも
嘘かホントか言い続けて来る人はいて
今の職場の人などは
これまでの人達とはまたひと味違い
まだ三十代でも通りますかねと尋ねると
二十代でもイケると言うのだから
これからはベンジャミンと名乗ろうかと
心の中で密かに思う始末
とにかく明るい
母親世代の同僚に言われるからと言って
だったら安心だとは思えないけれど
まんざらでもない気分にはなる
近頃は勤務時間が変わり
顔を合わせる機会が減ったせいなのか
たまに会うとエライ感激されて
とうとう今日に至っては
控室の扉を開けて挨拶した途端
可愛い!と言われ
偶然周りにいた
他の同僚達に向かって
ねぇ女の子みたいでしょッ!と
興奮気味に吐き散らかして
失笑を誘っていたけれど
笑われてるのはこちらなのだから
とんだ貰い事故だった
青いハーフパンツに
赤い小花柄の長袖シャツ
白とネイビーの
幾何学模様のソックスに
白いスニーカーのボブヘアの
49歳の男がいつもの職場の扉を
開けた瞬間に可愛いを
連呼されたらどうなるのか
辛うじてサーディカルマスクと
長い前髪のおかげで顔は隠れていたから
真っ赤になった顔と耳は見られず
驚きに絶句した表情すら
誰に見られる事も無く
静かに着替えていつも通り
作業場へと向かいはしたけれど
二日酔いのように胃はムカムカして
未だに悲喜交交の上限と下限の
振り幅が大き過ぎて酔い続けている
もしも私がオバサンになって
スカートを履いたところを想像すると
やっぱりミニスカートなんてとても無理よと
いつかの流行歌の歌詞を声に出してしまい
ちょっと気持ちが悪くなっても
安心してください吐いてませんよと
戯けながら階段を掃く清掃員
結局オジさんでも
オバさんでも
掃除を生業にするしかない
現実は変わりやしないのだから
どちらでと良いけれど
まさか自分が女の子みたいと言われる
人生のひとコマに出会うなんて
ホント世の中
何があるか分からない
それがまた初体験でもないから
それほど驚きはしないけれど
ただこの年齢になっても
まだ言われるのかと
少し鬱陶しく感じてしまった
赤ん坊の頃の写真を見ては
女の子みたいとよく言われて
慣れてはいるし
二十代の頃なども
タイトなズボン姿を見た父親から
何かお前女みたいだなと言われもして
極稀にそう言われはして来たけれど
あれほど嬉々として
可愛いを連呼されてからの
女の子みたいだったものだから
この台詞が思い浮かんだ