レンタルビデオ店の
閉鎖が相次いでいるらしい
昔は本屋と共に
暇つぶしに通った場所
十九か二十歳の頃
当時のバイト先の誰かと喧嘩して
勢いで飛び出してしまい
辞めたつもりで
新たなバイト先を探して
面接に行ったのも
レンタルビデオ屋だった
何がきっかけで当時のバイト先で
トラブルになったのかは定かでは無いけれど
3年ほど勤めた土産屋での日常に
当時の自分が飽きていたのかもしれない
初めて通った幼稚園を
1年で転園して
小学校も2年間通ってから
別の小学校へ転校して4年間通い
自動的に中学と高校も
3年間で終わりを迎えて
長期間勤めたバイト先で3年が過ぎて
それまでは自動的に3年くらいで
環境が変わっていたのに
いつまで経っても変わる気配の無い
慣れてしまった毎日にイライラしていた
学校だけでなく
暮らしていた家も数年毎に変わり
その度に人間関係も入れ替わるからと
嫌いな人がいてもその内
離れる事になるのだからと
高を括っていたら
フリーターとはいえ
社会的に自立してしまうと
自ら行動を起こさない限りは
日常は変わらないのだと
その時に初めて知った
突発的な激情に任せて
慣れ親しんだバイト先に
後ろ足で砂をかけるように飛び出し
もう戻れ無いと諦めて
仕方無しに他のバイト先を
情報誌を買って探したら
レンタルビデオ店で募集していた
その頃は
映画やテレビドラマなどを
レンタルしては観まくっていたから
これならちょうど良いと
応募して面接をしたら
案外とスンナリと採用され
偶然とは恐ろしいもので
2つのビデオ店で面接を受け
後に面接に行った店舗に
飛び出した土産屋のバイト仲間が
たまたま客として来店していて
面接時に即決で断られた直後に
鉢合わせしてしまい
不安にかられながら
話していたら泣きそうになり
その姿を見たバイト仲間が同情したのか
土産屋の社長達に話したのか
次の日に連絡があり
話しがあるから店へ来いと言われた
ちょうどその日
先に面接に行ったビデオ屋から
採用の連絡が来て
昨日の事などすっかり忘れて
安堵感に包まれながら
その連絡を受けたものだから
まぁ良いかと明日行きますと答えた
行ってみると
社長に戻って来いと言われ
期せずして
ビデオ屋に行くのか
土産屋に戻るのか
選択を迫られてしまい
しばらく考えさせて欲しいと
話してその日は帰った
明日はビデオ屋への
初出勤日なのに
思いも寄らない展開に困り果て
未知のビデオ屋に行く事に
尻込みしてしまい
元の日常に戻れるなら気楽だからと
ビデオ屋には知らせもせずに
土産屋へと戻ってしまった
せっかく採用して貰いながら
恩を仇で返してしまい
当時の阿呆真っ盛りな自分ですら
流石に申し訳無い思いが残り続けて
事あるごとに思い出しては
恩知らずな行動を
平気で出来てしまう性分だから
気をつけ無ければならないと
何度となく自分に言い聞かせた
そんな思い出を抱えながら
その後も何度となくレンタルビデオ屋へ通い
映画やテレビドラマやCDを借りては
お世話になりっぱなしだったけれど
動画配信が普及すると
迷う事なくそちらへ流されるのだから
生まれながらの性分とは恐ろしいもので
仕舞いには
まだレンタルする人がいるのかと
不思議に思う始末で
呼吸するように
恩を仇で返す自分を
少しだけ戒めたくなる
今日このごろ
たまたまニュースで
レンタルビデオ店の閉鎖が
相次いでいる現状を知り
もしもあの時
あのビデオ屋へ転職して
同じようにこの歳まで
同じ業界で働いていたら
近い内に
業界自体が消えてしまい
手に職も無く
他の業種へと放り出されて
しまうかもしれないと思いながら
働き続けるのは辛かろうと思い
あの時行かなくて良かったと
無意識に思い浮かんで来るのだから
性分とはどうしょうもないもので
人間とはそう安々と
改心出来ない事を思い知る
結局あの後
二年ほど土産屋で勤めて
同じようにイライラしては
周りに当たり散らして
解雇されたのだから
報いは受けてのかもしれない
あの時の出来事がきっかけで
四半世紀も続けられる
清掃員という職業に出会えたのだから
案外と運が良かったのか
はたまたバイトの清掃員から
抜け出せないという呪いなのか
しかし職種としては
まだまだ無くなりそうもない清掃員
あと30年くらい続ければ
卒業出来るだろうけれど
それまで存続するのだろうか
もしも続くのなら
職種も自分の健康も維持されるのだから
万々歳といったところか