年寄りとは
老い先は短いけれど
日々の暮らしでは
時間を持て余す
もちろん
人によりけりだけれど
よく行くスポーツクラブの
開店時間には行列が出来上がり
そのほとんどが高齢者
ロッカーで着替えていると
一日中する事もないから
パチンコへ行ったりゴルフへ行ったりと
様々な人達の会話からの情報を
盗み聞きした結論としては
大概のご老人達は
暇を持て余している様子
実際にスポーツクラブの
お風呂会員達は朝風呂の後
パチンコ屋へよってから
家へと帰って酒を呑んで寝るだけと
誰かと誰が話している
だから今度のゴルフが
楽しみで仕方ないと一方が言うと
もう一方が打ちっぱなしへ
行くのがもっぱらだと返す
九十歳を超えた人などは
これからカラオケだと言う
気心知れた人達と歌い笑うのが
生きがいなのだとか
もうすぐ八十歳になる
父親なども釣りが趣味で
近くに川があるのに
わざわざ遠くの海へと行くらしい
おそらく幼い頃の
ささやかな夢だったのだろう
車も珍しい時代の山育ちだから
海で魚を釣るのは想像出来ず
いつか一度くらいはなんて
願ったのかもしれない
願いという執着は
無意識に残り続けるものだから
仕事も卒業して日がな一日を
どう過ごそうかと迷った際に
不意に思い出したのかもしれない
父親が釣りを
趣味にしてから幾年月
その前はパークゴルフに
明け暮れていたけれど
何処かで飽きたらしいけれど
釣りにはなかなか飽きないのは
おそらく子供の頃の夢が
関わっているのではと
勝手にそう思い込んでいる
母親も一時期
ドライフラワー制作に明け暮れ
その施設が無くなった途端に止めた
それからの趣味は家庭菜園らしく
野菜などは自給自足
あれほど農作業が嫌だと
祖父母と喧嘩別れして別居したのに
今はそれを趣味としているのだから
別居の原因は人間関係だったのだろう
たまに電話で話をすると
案外と忙しいと言う
どうせ暇なんだから旅行へ行けばと言うと
泊りがけの旅行なとは億劫だから
家で自分のペースで出来る事をするのが
性に合っていると言う
年を経る毎に
人はその暮らしに没頭するらしい
個人的にはそんな
ストレスの無い暮らしに憧れ
それが当たり前だと思いながら
まともな職などは要らないと
のんべんだらりと暮らしている
老い先もそこそこ有りながら
時間を持て余しながら暮らしている
ただ暇を潰す才能には
長けているようで
なんてことの無い日常の中で
安穏と暮らせる性分なのは
私の唯一の才能だろうと思うと
これ以上有り難いものはない
国が豊かなら
貧乏人でも困りやしない
どれだけ金持ちになっても
暇からは逃れられやしないのだから
生活費を稼ぐ目的以外の
何かしらの目的の為の行動は必須
だからこそ誰もが
持てる金を使って遊ぶ
子供の頃の夢や
コンプレックスなどの執着は
おそらくそんな時にこそ
役に立つのだろう
国の絶頂期を過ぎた
失われた時代を乗り越えた
老い先短い人達を見ていると
前時代的な庶民が抱いた
夢の年金生活を謳歌している
幼い頃によく聞いた
年金生活とは
働かずなくとも成り立つ
自由気まま生活で
出来る事ならそのまま
一生暮らしたいと願った
これといった取り柄は無い
けれども病院知らずの
健康馬鹿な身体を活かして
肉体労働で食いつなぎ
人口減少の恩恵か
何もしないのに暮らし向きが良くなり
五十の手前で
あの頃夢にみていた
老後のような生活を手に入れた
人生百年時代を迎え
老い先も長くて暇を持て余し
余暇を楽しめてしまう
そんな無精者が案外と
幸せ者なのかもしれない