旅の目的は何でも良いから

どこか遠くへ行きたくなると

湧き出るのはいつも過去



おそらく無意識に刻まれた

自分の知らない自分の過ごしたであろう

その時間を遡りたくなるだけで

まったく意味を見出だせないけれど

旅の計画は寝ている間に

頭の中の小人が勝手にプランニングして

朝目を覚ますともうすでに

行く事が決まっていたりする



今回のテーマも

戸籍を巡る旅パート2

幼い頃に離婚した

両親の生まれた土地を巡るという

いや本人に聞けよって話しを

あえて聞かずに行ってみるという

トチ狂ったプランを小人が提案



なんの為にという

愚問は何度も自問したけれど

前回の母親編が

殊の外面白かったものだから

これは父親編も

行かなくちゃならないと

もうあの時から決めていたらしい



しかし現実の問題その経費は

どこから出すのだと問う間も無く

確定申告時の異常な還付金が転がり込み

ハリウッド映画にも出演していた

外国人俳優が国内で

舞台をするというのを知り

予約をするとちょうど良いから

それにカコつけて巡れば良いからと

思い立ってしまった今回



観光地でも何でも無い

その土地を巡るのは好きで

普段の生活の場として

過ごしている人達と

すれ違うだけでも

その土地に愛着を抱いてしまう



もちろんその土地が自分の

親の生まれた土地という思いが

その感覚を強くしている



しかし特別

どこか行きたい場所はないから

とりあえず目的地は今回も

その土地の神社にする



案外と神社は 

どれほど田舎でも有るので便利

しかも誰一人存在しない

静まり返った境内に

一人立っているだけでも

何か特別な事のように思えて

ワクワクしてくるのだから

どこまでも金を必要としない性分



しかし驚くのは

両親共に別の場所なのに

同じような環境で育ったのだと

実際に行くと思い知り



おそらくその思い出話しで

意気投合したのではないかと

勝手に思い込んでは納得し

やっぱりなと声に出してみる



どれだけその神社と父親に

関わりがあるかは分からないけれど

ひとまず祈る時には

この土地で私の父親が生まれた事を

説明してからお礼を伝える



そして今回は

亡くなった父親が

天寿を全うした事を報告し

陰日向と見守ってくれた事にも

お礼を伝えてしまった



会った事はあるだろうけれど

顔も覚えていない父親の代わりに

お礼を伝えるという

浮世離れした祈りと静まり返った

自分1人きりの境内の空気の中では

それが自然な事ように感じた



顔も知らない父親の

住民税の請求が知らない自治体から

送られて来た時には考えられないくらい

そこからの気持ちの流れを楽しみ



おそらくもう二度と

訪れる事のないであろう場所を巡る

それは血筋を遡る疑似的な再会なのか

それともただの気まぐれなのか

自分でもよく分からない旅



ただ戸籍謄本を見ると

自分の出生届を提出したのは父親で

そんな記録も残るのだと

驚くと共についでに

その役所にも行ってみるかとなり

その近くにある神社も

参拝すると何と無く

落ち着くのだから不思議なもので



請求書には顔も知らない父親の

最期に暮らしていた住所も記載されてる



訪ねてみるとこれがまた

大都会の河沿いにある公営住宅で

部屋のあった12階からの眺めは格別で

環境選びのセンスは良ったらしいと

感心してしまった



抽選だと本人の意志とは

無関係かもしれないけれど

そう思うのは自由だろう



近くには大きな川の河川敷と

大きな公園があって

自分が都会の公園が好きな理由は

父親のそんな環境を選ぶ感性が

原点のように思えてしまった



建物から出ると

すぐ横に幼稚園があり

その横を通り抜けない事には

敷地の外に出られないのだから

おそらくここを通ったに違いない



周辺を散策すると

とにかく子供達が多く

近所の通りから

大きな公園や河川敷

駅前までの道のり



そのすべての景色に

赤ん坊から高校生や大学生

赤ん坊を抱いたり

子供と手を繋いで歩く大人までと

たくさんの行き交う人々を見て

だいたいこの年齢くらいまでの

自分しか知らずに彼は死んだのかと

思わずにはいられなかった



彼の人生に

自分の記憶はあったのだろうか



離婚をして

十年も過ぎればバブルも弾けて

おそらく大変な思いもした事だろう

そんな時には忘れたかもしれない



何年その公営住宅に

住み続けたのかは分からない

ただあれほどすべての世代の姿を

散歩でもすると嫌でも

近所で目にしてしまった違いない



その時に

思い出す事はあったのだろうか

思い出して欲しいと

思ったのだろうか



次から次へと

行った先でまた次の行き先が

すぐに思いついてしまい

その気持ちに引き摺られるように

父親との繋がりがある場所を巡るうちに

離れる前は2人で

もしくは3人でこんな時間を

当たり前に過ごしていたのかもしれないと思うと

ちょっと切なくなったりと



今回の戸籍を巡る旅路は

心身共に疲れ果てる道のりで

気分転換に良いと思って観た

ハリウッド俳優の舞台も

その本人の自伝的なストーリーで

余計に切なくなり



その舞台のお土産に

日本酒が一瓶振る舞われ

ホテルで一人で呑みながら

この文章を書いたせいか

記憶の前後が入れ替わってしまい



後日読んでみると

記憶とは全く違う物語になっていて

あの舞台の話しなのか

実際に旅した記憶なのかも

分からなくなってしまい



時を超え記憶も曖昧な

遠い場所まで旅をした気分になり

これがあの時に思った

どこかなのだろうかと思い

小人の旅行プランニングのセンスには

驚かされて感心してしまった