憧れた人は誰かと

振り返るとたくさんいるけれど

たとえば母親を見ると

家にいるだけで暮らせるのだから

ずっと羨ましかった



その日の授業で 

嫌な発表をしなければならないからと

気重に登校する時に

いつも一人で家で過ごせる

母親のようになりたいと願った



場末の清掃員とは

あの頃憧れた生活に近く

そういう意味では

憧れの生活は手に入れた



父親にしろ 

母親にしろ

自営業だった事もあり

ずっと家にいるのだから

気楽なものだと羨ましくて

嫉妬したくらい



家を出てから三十年

一人暮らしが染み付いて

もう誰かと暮らす事などは

考えられず

今の両親を見ても

まだこれから三十年は

今と同じ様に暮らせるのだと思うと

何だかホッとする



特別金持ちでも無く

散歩くらいの健康習慣しか持たない

両親でもあの歳まで

自由に過ごせるのだから

自分も健康管理をするだけで

ああなれるのだと思うと

夢があるなぁと思う



一人で三十年暮らしたのは

何も自分だけじゃない

祖母という前例を見ていたから

そういう人もいるのだと

自然に思ってもいたし

そんな暮らしをいつかは

手にしたいとも思っていた



戦前生まれの祖父母達

父方母方合わせて四人中

三人が喜寿を超えても

元気にしていたし



特に母方の祖母などは

ずっと一人で暮らしていて

そんな環境が

好きだと言っていた



亡くなる前の一、二年は

施設暮らしになっていたけれど

九十歳を超えても

一人暮らしをしていたのだから

自分も上手くすると

百歳くらいまでは

このまま暮らせるかもしれない



そう思って

嬉しくなるのだから

結構この人生を

満喫しているのかもしれない



いくら影で

無用の長物だと罵られても

知らぬ顔して暮らす