夜明け前の思い出に

キスでもしてみませんか



憧れていた

先輩女性からの突然の提案に

心が少しだけ動いた

けれどすぐに打ち消して

また今度と答えた



チャンスは

そこらに転がっていると

よく言うけれど

欲しいのはそんなものじゃなくて

始めからの成功だ



なぜあの時毎日毎夜

頭に浮かぶほど好きだった

先輩の素敵な提案を素直に

受け容れられなかったのだろうと

今でも時々悔やんでしまう



憧れの異性との

初めてのキスの味を

ロマンティックな思い出として

残したかったのかもしれない



当時はそれほどに若く

あの夜明け前の思い出にという

彼女の言葉が余計に

心の中を潔癖に導いた



なぜあの時

朦朧とする意識の中で

先輩の口から

嘔吐物と一緒に

あんなに素敵な言葉が

溢れ出たのだろうか



酔っぱらいの戯言は

今でも素敵な思い出のまま