んなものなぁ無い

だって働きたくないからね



子供の頃から

仕事なんてしたくないと

ずっと思っていたものだから

将来の夢などを聞かれても

お金持ちとしか

答えようが無かった

お金が有れば

働かなくて良いと考えたから

お金が欲しいと願っただけ



これまでの人生

清掃員とはいえ途切れる事なく

働けているのはそのお陰だけれども

仕事してる時点で不幸なのよ



お金持ちになれたら

仕事をしなくても良いから

頑張って働いてお金を稼いで

貯金するしかないと思っていた



けれども働けど働けど貯金どころか

来月の生活すら見通せなかったものだから

いつまで経っても仕事をし続けていた



気力も体力も

長時間拘束に奪われて

残りの時間で考えた



もう好きな事をするには

仕事を趣味にするしかねぇ



そう考えると

確かに気持ちは楽になった

お金を払って

何か趣味を楽しむのは諦めて

お金を貰える事を

趣味として捉えてみると

無駄が拘りへと変わった



始めは100円で買える

ゴム手袋の色や材質に拘る事にした

とにかく好きな方を選ぶと

150円でしか買えない

しかしそれくらいなら払えるのだから 

少しでも気に入った物を買ってみた



そうすると使い捨てだから

破れても構いやしないと

際限無く買い替えていた

ゴム手袋が急に勿体無いと思い始め

破れないようにと気をつけながら

使うと購入頻度が下がり



月換算すると

購入金額は1.5倍になったのに

購入数が減って節約になり

そこに気づくと貧乏なのだから

自然に益々拘るようになり



月末などはこれ以上は

今月の予算オーバーだから

もう破れないという

まったく意味の無い

緊張感を背負いながら

いつも通りの作業をすると

不思議と楽しくなり

本当に仕事が趣味となった



一度楽しみ方を覚えると

あれもこれもそれもと試したくなり

その中から続くものが趣味となり

飽きればまた何かを探すの繰り返し



その頃には周りにも

仕事が趣味だと言い触らし

週末だとか盆だ正月だとか

ゴールデンウィークなんてものは

自分には関係ない世界で

週休二日なんて

異世界かよと思っていた



その向こう側の世界に

行けるとも思っていないから

興味すら抱く事も無く

その日一日がどれ程の強度で

襲い掛かって来るのかしか思い至らず

その現実から

逃げるという選択肢すら無かった



二十代という事も救いで

同僚は年上が多く

正規とか非正規とか関係なく

後から入って来る作業員達は

普通の世界から篩い落とされた

中高年が多かったものだから



こちらの世界の日常が

彼等にとっては地獄に感じられた様で

自分の親のような世代の男性が

最初は前職では課長でした

部長やってましたと

偉そうに自己紹介され



何かの営業マンが

なぜ清掃員を選んで働くのかと

不思議に思いながら

単純作業の説明をしようと

とりあえず階段で

10階まで行きますと言うと

エッという顔をされ

エレベーターは使えないのか?と怒られ

現場監督にお願いしに行くと

ふざけんなッと怒られ



人間第一印象が8割だとか

要するにその時点でもう嫌いになり

10階で待っていても上がって来ず

どうしたのかと降りて行くと

7階当たりで

産まれたての子鹿みたいになってる

そんなおじさん達を見て

普通の世界とはどんな世界なのかと

思いっきり怖くなってしまった



歩けなくなるほど

足を痙攣させている人を見てしまうと

なぜこの体力で肉体労働を選べるのかと

怖ろしくなってしまったのだ

自分の事がまるで分かっていない

中年のおじさんが涙目で

無理ですと言われ続けると 

なんだか切なくなった



自分があの年齢になったら

ああなるのかと思うと怖ろしくて

何か出来るようにならなければならないと

無意識に焼き付けられた



それと同時に歩くという行為が 

人によっては辛い事なのだと知り

今度何が得意かと聞かれたら

体力には自信があると

アピールようと思いついた



その後そこで思いついた

ストロングポイントは

あまり役には立たなかったけれど

ジョギングを始めたり

筋トレに目覚めるきっかけにはなったから

何が後々何を運んで来るのかは分からないから

特技だと思い込む事は無駄にはならなかった



社会が変わると

自分にも普通の世界へのチケットが届き

週休二日でまともに暮らせる

月給を貰える会社に出会い

初めて貰った給料明細を見た時の

安堵感と驚きは忘れられない

こんな世界があったのかと感動し

サボる事しか考えなくなった



やってもやらなくても

周りの人には気づかれない作業は

どんなにサボってもバレず

しかも著しく汚された場所を

元通りにする掃除をするだけで

異常なほど喜ばれ怖くなった



サボっても

何も問題が起こらない

だから身体を動かさないから

体重が増え続けて

ダイエットの為にサボるのを止めたら

元通りの体重に戻り

自分の都合でやってもやらなくても

何も変わりもしない作業を

ひたすらする事を受け入れると

やっぱり楽しくなった



仕事をする事は不幸なのに

自分の目的に沿った仕事内容なら

喜んで出来るのだと知ると

何の為にという自問が

頭の中で常に鳴り響くようになり



その目的が

その職場に無くなると

自然に転職をしては

そこでまた新しい目的を得て

それを達成する為に

日々を過ごすだけで

夢中になっていた



転職は一度手にした物を

手放すという遊び

必ず取り戻せるとは限らない

そのスリルを味わう遊び



そんな感覚を味わうと

仕事とは遊びのように思え 

生活費が貰えて遊べるのだから

これ程効率の良い趣味は無い



人手不足が一般化されると

何かしらの仕事には有りつけるという

安心感がまた新たな好奇心へと誘い

今では歩くだけでお金が貰えるという

神の領域へと辿り着き



サボる時の暇つぶしに

独り言を長々と書き綴るこの日々に

仕事をしているという感覚は無い



この現状から考えると

好きな仕事を探すよりも

その仕事の好きな所を探して

楽しくなるまで拘ると何かに出会えて

またその次の予感が芽生えて

またちょっとはみ出してみるを繰り返すと

仕事なのか趣味なのか分からなくなり

どうでも良くなる



結局は

ストレスの無い生活が一番だから

辞めたいと思う職場からは

サッサと飛び出して

どういう訳か分からないけれど

気がつけば続けている事を

一度見つけてしまうと後は簡単



無意識に続けていた事を

意識的に続けるだけで

その内楽しく感じ始める