成功人生を諦めると

途端に価値観が変わる



理想を目指した訳じゃ無く

憧れた生活を手に入れた結果

人生に失敗して来た事に

ゆっくりと気づき始めても

なかなか認められずに

躊躇いながらドロ沼へと沈んだ



底の見えない

谷底へゆっくりと堕ちて行く感覚

それ程嫌な気持ちはしなかった

それこそが憧れた生活だから

堕落して行く快感に酔いしれながら

常識ある人々の声に怖れ慄き

不安を煽られるくらいなら 

一人のほうが気楽だからと

逃げ込んではまた堕ちた



墜ちた先での暮らししか知らず

常識ぶった人に

馬鹿にされるのも慣れてしまうと

案外と堕ちる前と変わらない事に気づき

また憧れを追い続けた結果今に至る



社会不適合者なのだから

常識的な幸せなどは求めていない

ただこだわりを貫きたいだけ

良くも悪くも自身の感覚しか知らないから 

歳を負うごとに迷わなくなる



まるで心身が

マトリョーシカのように

赤ん坊から今に至るまでの

すべての自分が

幾重にも重なり合う感覚



裸の心のまま

目の前の選択を迫られると

成功や失敗という概念が無くなり

そこに至るまでの感覚が

自己肯定感を生み育て

充足感に包まれてしまう



選択権を

与えられている事の贅沢を知り

迷う楽しさに飽きるまで迷い

面倒臭くなったら

一度忘れて適当に決める



過程も結果も関係なく

その経緯を辿る事が大切で

振り返る時にどれだけ無意識に 

選択をした理由に思い当たるのかが

楽しくて仕方が無い



あっ死んだ

という衝突事故の瞬間

スローモーションで激突する

相手の顔が目に焼き付くような記憶を

呼び醒まして行く作業が

老後のお楽しみに変わった



人生とは生きて来た道程

記憶や記録に刻んだ

現実をフィルムに焼き付けて

感覚シアターで振り返り上映しながら

何度も脚本も脚色も変えて楽しめるのだから

その過程での成功や失敗には

あまり意味が無いとさえ思える



人生に大切なのは

自分を嫌いにならない事

離れられない自我を

捨てようとしても意味が無い



嫌いな奴は

思い出すだけで嫌になるのだから

出来るだけ嫌いな部分だけ削ぎ落とした

好きな自分になるほうが良い



逃げても負けても腐っても

命を捨てなければ

その時々を振り返りながら

笑って許してしまえる時が来る



不適合なのだから

他者と競っても勝てやしない

袋小路に出くわしたら

命以外は全部捨てて逃げれば良い

心や感覚を捨てても

生きてはいられる



生きてさえいれば

未来は勝手に今日になり

何でだろうかと

繰り返し考えているだけで

そのうち自分のその阿呆さが

不意に愛おしくなる