玄関は家の顔であり
もちろん運の出入口でもある
毎朝拭き掃除をすると
運気が上がると言うから
元日から始めてみたら
ものの見事にハマってしまい
今日はやらんで良いやんと思っても
強迫観念という小悪魔ちゃんが出て来ては
幸運を逃すかもしれないという
不安を撒き散らされて
何かの時は神様が一押ししてくれるかもという
天使のささやきが頭から離れず
結局は続けている始末
大概の習慣は
こうして作られていく
元々からして
下心がある行為なのだから
神様なら見逃さず
逆に天罰でも下りそうだけれど
困った時しか頼まないから
足元を見て来る
神様だっているかもしれない
そんな時にもしも
その足の下の玄関の床が
ピカピカに磨き抜かれていたら
ダメ元の願いを
叶えてくれるかもしれないからと
どうでも良い事を思いながら
陽が昇る気配も無い早朝に
一人床に這いつくばりながら掃除すると
いつの間にか楽しみを作り出すのが
一流の清掃員たる証なのか
汚れとは災いであり
それを退治する事こそ浄化の儀式
雪国の路上は
コチコチに凍結しては
よく滑るものだから
道端のあちこちに
滑り止めの砂袋が設置してあり
通行人が自由に撒く事が出来る
そんな滑り止めが撒かれた
歩きやすい道を歩いて帰るのだから
当然に靴の裏には
雪やら砂やらがくっついて離れない
大概は外で払い落とすけれど
一晩乾かしついでに
玄関へ放って置いておくと
雪が溶け落ち床は水浸し
しかもそこには砂も混じって
黒く点々と垂れて汚らしい
だからこその浄化なのだけれど
汚れるのが分かっているのだから
無意識に払い落としていた
靴の裏の汚れを
浄化の儀式をするようになってから
意識的に払い落とすように改めてみると
それ程汚れなくなり
それでも1つ2つ見つけると
それが不幸の種のように思えて
初めは目で見て確認していだけなのに
何も見つからない時には
手で触れてザラザラを探し当て
小さい黒点のような砂粒を取り除き
ようやくスッキリするという
何かに取り憑かれたかのように
玄関周りの掃除をするのが楽しくなり
今では習慣というよりも
シンドロームになりつつあるが関係ない
これは不幸の種を取り除く儀式なのだ
家の中へ不幸を招かない為に
氷点下の早朝に一人で床に這いつくばり
素手で床を隈無く触りまくる行為が
そもそも不幸なのでは無いかとも思うけれど
止められない止まらない
不意に不幸の種は
心の中にあると気づき
何だか切なくなる今日このごろ
家の顔はスッキリしても
鏡に映る顔はゲッソリするばかり
けれどもいつかこの苦行が
幸運をごっそり運んでくれると
まだどこかでこっそり信じているのだから
これ程あっさりと占いにハマり
幸せになれる者も珍しいだろうから
このさっぱりな人生を送る
阿呆な信者に愛の手を差し伸べる
神様もいるかも知れないと
やっぱり楽しくなる始末