24歳になる年に

清掃作業員となった



本当なら23歳を迎える頃には

恐怖の大王が地球を滅ぼすはずだったけれど

何事も起こらずに一年が過ぎた頃だった



そこまで本気で 

ノストラダムスの予言を

信じてはいなかったけれど

これといって滅亡しても

困る事も無い人生だからと



それを理由に

怠惰な生活を漫然と続けていた

そしてその日常に飽きたから

もしかしたらという

地球滅亡の可能性はゼロでは無かったから

藁に縋り付くように騙されていたけれど

流石に半年も過ぎると諦めが付き



それから先の人生をどうしようかと

おそらく無意識に捉え始めて焦り

イライラが止まらなくなっては

周りの人達に当たり散らして

数年間お世話になったバイト先を解雇され

仕方が無いからと他のバイト先を探した



とにかく楽そうなものをとしか考えず

ひたすら情報誌を眺めていた



そんな時にたまたま観ていた

2時間ドラマの主要な登場人物が

清掃作業員をしていたのを見て

これなら楽そうだと思って

すぐに応募するとあっさり採用された



あれから24年

未だにその仕事を続けている

始めた頃は

生活費もままならない程の低賃金で

しかも札幌という雪の積もる街で

よくぞ生き抜けたものだと

今ではその頃の事を

まるで他人事のように振り返り 

二度と同じ生活はしたくない



そう思いながらも

手取りの金額は今もそれ程変わらず

それでも当時とは雲泥の差の

心地良い生活が出来ているのは

一重に社会が成長してくれたおかげ



フリーターにも

社会保険を提供してくれるようになり

払った事も無かった年金も

厚生年金という形で天引きされ

今ではいくばくかでも

老後に支給されるくらいの期間の

支払いをさせて貰っている



二十歳の時には

すでに支払っていないのだから

老後の年金生活など

選択肢から消えたのに

無理矢理に支払わされて



最初は反発もしたけれど

慣れるとそう大して生活は変わらず

でもしっかりとかけ続けて

今ではマイナポータルで 

いくら支給されるかの目安さえ示されて

確かにそれだけでは生活は出来ないけれど

今のこの状況にいくばくかの

年金という収入が増えるのかと思うと

その分出勤日数を減らせるのだから

楽が出来るだろうと楽しみにする始末



団塊世代の両親の終活の心配をしながら

でもそこそこの資産を保有してるみたいだから

本人達に言わせると

阿呆な息子の助けは要らないらしく

それを信用すると

自分の終活を考えれば良いのだから

ひとまず動画でそういったものを探して

視聴してみると



一ヶ月換算で支給される年金額が

一番少ないパターンで6万円だったから

ひと月に十万円稼げば良いらしいと思うと

その動画ではこの世の終わりのような

イメージで描かれていたけれど

その生活が私には夢のように思われ



大概の人達は

支給される金額が多かれ少なかれ

現役時代よりも生活費を

節約せざるを得なくなるらしく

高齢になってから

それまでの生活習慣を変えるのには

一律に苦労するという内容で



結局それまでの人生すべてを

貧乏生活をしていた人は

その生活をただ続ければ良いだけだから

何も変わらないと言っていた



確かに自分が

年金支給をされるようになっても

働き続けるつもりで

今も過ごしてはいるから

何よりも健康には気をつけている



目指すはPPK

要するにピンピンコロリと天寿を全うする事

ボケてしまえばどうにもならないが

八十代までは元気に働いていた

同僚の作業員達を見て来たものだから

現実的にも可能な目標として

まずはそこを目指して日々を暮らしている



何か大きな事を成し遂げたい訳じゃない

ただ心地良く人生を全うしたいだけ

祖父母や両親を見ていても

何も特別な事はしていないから

おそらく自分もそうなるのだろう



これまでの人生でも

何かを成し遂げた訳では無い

ただPPKを達成出来るように

日々を過ごして行きたい



それはこの清掃作業員を

始めた頃から何も変わらない

何か大きな夢や希望を目指して

生きてきた訳じゃなく

それしか出来なかっただけ



仕事柄

職場では五十代を目前にしても

まだ下から数えたほうが

早いくらいの若手扱い

未だに若いと言われる世代



老後の小遣い稼ぎに来ている

母親世代と同じ作業を繰り返しては

未だに子供扱いされる始末

それにももう慣れた



なにせ四半世紀

その状態が続いているのだから

いつまで経っても心が幼い

しかしフリーター作業員とはいえ

ずっと年寄りに囲まれていると

案外と老いても元気なものなのだ



職場の年寄りも

スポーツクラブの年寄りも

嘘かホントかも分からないような

噂話に花を咲かせながら

楽しそうに動き続けている



あの姿を見ていると

老いていくのもそれ程悪くは無い気がする



流石に職場では

同じ作業をしているだけだと

体が鈍ってしまうから

筋トレををしてから職場へ行く

辛くても目的の為に続けるコツは

そのストレスを

コントロール出来る環境を作る事だ



職場の作業は

今日は気分が乗らないからといって

やらない訳にはいかないけれど

スポーツクラブでのトレーニングは

やるやらないとか

今日は疲れているから軽くとか

コントロール出来るのが良い



健康体を維持し続けていれば

これまで同様に社会が都合良く

老後の生活を上手く送れるような

何らかの便利なシステムを

作ってくれるかもしれないという

何とも自分勝手な願いすら

叶いそうなくらいテクノロジーが

発展してくれないかなと

本気で思っているのだから

これ以上ない幸せ者だと我ながら思う