四度目の年男となり

その半生を振り返ると 

時代の変化の振り幅の大きさに

今更ながら驚く始末



今こうして

スマホを片手に文章を書いているけれど

幼い頃にはこんな未来を

描く事すら出来なかったのだから

未来の事などは考える必要が無いと

無意識に諦めていたから

夢も希望も抱かずに

いられたのかもしれない



自分に想像力が無い事に気がついたのは

20歳くらいだったろうか



自費で詩集を冊子にしては

周りに配っていた

バイト先の同僚のパート女性と

小説家になりたいと夢を語っていた

バイト仲間の青年が

いわゆる文学について

仕事中の暇つぶしに話していて



そこに出て来る小説家の名前や

作品名などがまったく分からずに

一人会話に取り残されて

苦し紛れにおすすめ小説を聞くと

詩集女性には銀河鉄道の夜を



小説家志望には

そもそも本なんか読めんの?と

馬鹿にされながら読みやすいからと

村上春樹を勧められた



とりあえず両方古本屋で購入し

銀河鉄道の夜から読み始めてみると

いつの間にかそのまま

夢の中へと旅立ってしまい

これは無理だと悟り

もう一つの選択肢を開いて読んだ



おそらくは

羊をめぐる冒険だったと思う

面白かったのだけれども

その面白かったという記憶しか

残っておらず

大概の作品は読み終えてしまうと

すぐに忘れてしまう



しかしこの体験が自信になった

それまではアニメの延長のような

ファンタジー物語しか読めなかったから

有名小説家の作品を読破出来た事が

その頃の自分にはとても誇らしく



教えてくれた小説家志望に

読破出来たことを報告すると

いやいやあの作品も

かなりのファンタジーだわと

笑われたのを覚えている



馬鹿にされついでに

何か書いてみようかなと言うと

良いじゃないかと

その二人が揃って言うものだから 

何を書けば良いのかと聞くと

とりあえず日記でも書いて

気持ちを綴ってみればと言われて

ホントに日記を書きはじめた



実際に気持ちを書き出してみると

それはまるで針の穴に糸を通すような感覚



手先が不器用だからなのか

糸の先に感覚が上手く伝わらずに

あっちへ行ったりこっちへ行ったりして

なかなか上手く穴に通らない



それどころか糸の先を舐め過ぎて

ベトベトするように気持ちの悪い方へと

言葉が流れてしまい

青空の話が真っ赤なマグマの中へ

飛び込むような話に

いつの間にかなってしまい

気持ちを書き出すというのは

これほど難しいモノのだと驚いた



その頃はもちろん

ノートへ手書きだから

方向を間違うと

それまでの文章をすべて消して

また一から書き直し



ボールペンで書くのは諦め

シャープペンシルで書いていたから

すべて消すとゴムだらけ

一度手を止めると気持ちも止まり

何を書こうとしたのかすら忘れる始末



だからこうして

スマホで書いたり消したり

付け足したりと

自由自在に文章を綴る事が出来るのが

本当に楽しくて仕方ない



話の行く先は

相変わらず糸切れ凧だけれども

少しは気持ちを書き出す事が

最近ようやく出来始めて

文明の進歩の恩恵を感じている



不便さを知っているから

余計にこの便利さを感じて

悦に浸れるのだから

若い時の苦労は買ってでもという話も

あながち間違ってはいないようだ



退屈しのぎに

苦労をしないこの時代は

なんて素晴らしいんだ