夢や希望という願い

そんなもの無いほうが良い

それらが無いという事は

もう手にしているのだから

何も悩む事は無いはずだ



むしろああ成りたい

こう成りたいと思った事が叶っても

何となくしっくり来ない時の

がっかり感って結構辛い



個人的な経験だとなんだろう

たとえばパソコンだろうか



使えないと仕事にならないという

テレビドラマなんかの影響で

大して興味も無いけれど

たまたま平和な日々を

送っていた時期だった事もあって

練習しなければという

呪いのような思い込みに突き動かされて

使えるようになろうと決心した



しかし何をすれば良いのか分からず

ひとまずパソコンの購入代金を作る為に

ひと月五千円づつ貯金を始めた



購入したパソコンが

15万円くらいだったから

年間6万円だから2年半くらいかけたら

目標額に届いてしまい焦ってしまった



やりたくて始めたい訳では無くて

出来なければ将来困るだろうと心配だから

仕方無しに練習しようと決心したけれど

本音ではやりたく無いものだから

職場でもネットカフェでも練習出来たのに

開始時期を先送りにする為にと

やっぱり自分で買わなければならないと

無理矢理に心の中で折り合う為に

ひと月五千円という積立を始めただけ



その時は本当に目標額に届く前に

他の何かを買ってしまうに違いないからと

本気でパソコンを買うつもりなど無く

そして思った通り

ちょうど地デジテレビに買い替えなければ

テレビが観れなくなる頃で



その貯金で

だってしょうが無いじゃないかぁと

テレビとレコーダーを買ったから

ホントにパソコンとの縁が切れたと

喜んだのもつかの間

人生初のポーナスが支給され

ほぼ同額が振り込まれがっかり



へなまズルい性格の割には

決めた事は実行しないと気持ち悪くて 

観念してパソコンを購入して

半年ほどかけて

ブラインドタッチとWordとExcelの

基本を練習して

実用しないと使えるのか分からないからと

数年後に転職もして

何とかなりそうだと思ったら



オフィス勤務って

何か合わないと思い退職してからは

あまりパソコンとは縁のない

職場ばかりで

そうしている内にまだパソコン?

もう時代はスマートフォンだと

またまた誰かに煽られて

いつの間にやらブログ投稿を通して

今度はフリック入力の練習をする始末



2年半もかけて貯金して 

練習して何とかやって行けそうだと

思えたのだから

目標は達成したのよ

でも今使って無い



いや何が悔しいって

15万円も出して買ったパソコンと

同じような性能の

中古ラップトップが3万円で

売っていたのを発見した時はドン引き



あの2年半は何だったのかと 

泣き笑いそして使わないっていうこの現実



ただちょっとテレビドラマの

登場人物達に憧れたばっかりに

数年を費やして

パソコンと戯れたのに

それも今は昔となり

今ではスマホが手放せなくなっている



さらに追い打ちをかけるように

今の職場ではパソコンなど使わず

手書きの張り紙がところ狭しと

壁一面に貼り付けられ

ますます自己嫌悪に襲われる始末



そもそも清掃作業員に

オフィス勤務は肌に合わず

半世紀も前から続く

作業現場では未だに手書きで

シフトを作り

そして運営会社の担当者が

それをパソコンでなぜか清書していたが

打ち間違いが多いからと

手書きの書面をコピーして欲しいと

作業員一同からクレームを出している



憧れたのよ

カフェなんかでラップトップを開いて

株取引や為替の取引をするあの姿に

だけど今やスマホで

全部出来ちゃうからね



そりゃ膝を抱えながら

一生一人にしてくれや♪って

歌っちゃうよ



このエピソードを

振り返っても

どこにも夢も希望も無いし

目標を達成しても

次々と何かに突き動かされて

切りが無いのが現実



ただそんな阿呆な自分の

あの日々が愛おしくて仕方ない

そんな風に思える日が

この人生にやって来るとは

夢にも思わなかった



ただそうなりたいって

願いはしたから確かに叶ったとは言える

しかし問題は

夢や希望という願いが叶っても

人生は終わらないという事



その過程を過ごしている間も

世界は変わり続け

その現実に対応を迫られながら

目的の光に向かい泳ぎ続けるのは

ある意味病的な頑なさだ



年齢を重ねれば

ペースを落とさざるを得ない

そうしなければ

おそらく心身が悲鳴を上げるだけで

目指す光から遠ざかるだけ



くだらない拘りでも

持ち続けて進み続けると

たとえば貯金のように

毎月金額が増えて行くだけで

達成感を味わい



その繰り返しが

いつしかどうでも良かった

石ころのような目的を

ダイアモンドに変えるのだ



あの日あの時

諦めてしまおうと思った自分

投げ出してしまおうと思った自分

それでも積み重ねて来た

過去の自分を裏切るような気がして

捨てられなかった自分



いざ達成しても

踏ん切りが付かずに足踏みする自分

それでも自分が決めた事だからと

恐る恐る踏み出した一歩



貯金は何もしなければ良かった

それを使わない事が前進だったから

しかしタイピング練習は

自ら行動をしなければ当然上達しない



何をどうして良いのか分からず

がむしゃらに頑張っても上手くいかずに

その内練習を投げ出した日々は

心のどこかでいつまも罪悪感に苛まれ



そんな時にたまたま

別の用事で出掛けた家電屋で見つけた

タイピングトレーニングソフト

ちょっと高いけれど

藁にも縋る思いで衝動買いすると

思いの外タイピング練習が楽しくなった



目的を達成するに当たって

楽しいという感覚は革命だった



本来の目的よりも

練習する事自体が楽しくなり

もっと良いスコアを出したい一心で

馬鹿みたいに一日中練習した



ブラインドタッチで

タイピング出来るようになり

スコア上げにも飽きた頃

ようやく目標に向き直って

WordやExcelの基本を練習したら

実践してみたくなって転職した



行った先の環境と

仕事内容が気に食わないからと

あっさり辞めた

肉体労働から解放されて

体重が15キロ増えたからと

職業訓練を受けながらダイエット



貯金を初めて

15キロ太るまでのおよそ5年間の

努力は全く実にならず

それどころか無職となり大ピンチ

それでも振り返ると

あの日々の楽しさが舞い戻り

その感覚が宝物になった



その内にスマホが使い放題になり

SNSに出会って無意識にフリック入力を

使い続けているだけで上達して

そこそこの長文も入力出来るようになった



未だに成功とは程遠い真逆の人生

そんな暮らしをしているけれど

自身の成長という変化を実感する楽しさは

あの日々で培われたものだから

まったくの無駄でも無かったのだろう



夢も希望も

長く人生を続けていると

その形や感覚も変わり

現状に集中し過ぎると

いつかの願い事が叶っても

気づけなかったりして



振り返るとあの時

幼い頃の願いが叶っていた事を思い知って

喜べなかった事を後悔したりもするから

願い事は書き出して

定期的に確認するようにしたら

案外と叶っていない事がない事に気づき



これでもかというくらい

惨めったらしいと思っていた

この人生が愛おしく思えた



夢や希望という願い事は

大小様々なはずだから

目指すだけでは無くて

時には振り返ってみると

かなり叶っていたりもするから



大願成就だけでは無くて

その願い事の片隅に隠れて

すでに叶っている小さい願いに

目を向けると目の前の景色が

少しは明るくなるかもしれない



たしか何でも願いが

叶っちゃう呪文があったけれど

何だったかなぁ、、、



今はその呪文すら

無意識に無詠唱で使える達人へと

進化しているようだから

さすがは超絶貧乏星の

独裁者だと自画自賛する日々