人は誰しも生まれたくて

この世に生まれて来る訳では無い

自我に目覚めたり教育を受けたりと

気づいた時には

すでに人生が始まっている



生きるのか死ぬのか

そんな選択肢は与えられずに

ただ生きるように仕向けられた

摂理の掟レースへの参加を

余儀なくされる



自我欲に支配された者などには

この無慈悲な流れが人生などと呼ばれ

そこに目的を持てと言われても

そもそも生まれ無いという選択肢を

なぜ奪われているのかと気になり考え

そうしている間にも時は流れて

気力や体力を失ってしまう



生きていると

目的が生まれるのだろうか



腹が減れば喰い

眠くなれば眠り

退屈をする間も無く

何者かが襲いかかって来るから

何かしら対応を迫られる



その対応に

ほぼすべての時を奪われ

生きるのか死ぬのかの

選択を熟慮する暇も無いからと

ただ無力に気力も尽き果て

虚無な流れに身を任せる



しかし現実に時を過ごし

己の気性を自覚し始めると

生きる事への解釈が変わるのか

欲求を満たすという

自身の目的を見つけると

内側から気力が湧き上がる



どんなにつまらない思い

それが社会的には

何も役割を果たさないとしても

己自身から湧き上がった衝動であれば

拘る価値から逃げ出せず

そのくだらない思いに執着する



おそらくそれが

人生の成功というものだろう

地位や名誉を手にして

名声や経済力で欲求を満たす

または好奇心や探究心に支配され

それらを満たす事でも同じ



執着する事が人生を豊かにし

そしてその目的となるのかもしれない



生まれて来た事に

何の疑問も抱かずに

家族や友人知人に囲まれ

人類の一員として

今生を受け入れられるなら

何も問題は無い



湧き上がる欲求を満たす為に

目の前の現実を泳ぎ続けるだけで

満足出来るなら

たとえ四方を水平線に囲まれ

島の一つも見当たらない太平洋上に

ただ漂流していたとしても

何も迷う事も無いだろう



目指すべき陸地

その個人の目的地とは

常に内側から湧き上がるのだから

今は何も見えなくとも

その内に海底火山の噴火によって

そこら中に島が湧き出る感覚



しかしなぜ

生まれないという選択肢が

己に与えられなかったのかという

自問に取り憑かれてしまうと

ただ真っ暗な

大海原をひたすら彷徨い続け

感性に溺れるだけで

一生が終わってしまう



受け容れるべきは受け容れ

湧き上がる感情にしがみつくのも

案外と悪くはないが

道化るだけでは埒も無い