選挙などインチキだと
思い込んだきっかけは小学校の
生徒会選挙での体験だった
曖昧な記憶だけれども
たしか五年生の秋口あたりに
その選挙があった気がする
全校生徒80人くらいの
小さな学校の生徒会など誰でも良い
そう思っていたし
一学年一クラスなのだから
クラスメイトの誰かになるくらいで
自分には関係ないと思いながら
ホームルームを傍観していた
しかし大体
そういった役職につく生徒は
子供とはいえ
何となく会長は誰で
副会長は誰になるという
雰囲気がクラスの中に漂い
その通りの生徒たちが
立候補して一件落着
何も選挙などしなくても
決まるのが田舎の良い所などと
鼻で笑いながら
早く帰ることしか考えてなかったのに
なぜかその本命候補の対抗として
立候補させられてしまった
立候補とは
やる気が無くてもさせられる
ひとしきり本命の候補者が
出揃ってから先生が一言
生徒会選挙とは
選挙の仕組みの勉強でもあるから
それぞれ対抗馬を出せと言う
小学校とは
民主主義など皆無の権威主義
先生が言うのだからと
有象無象が面倒事を誰かにと
押し付け合う為に
推薦の嵐が吹き荒れた
しかし一クラス
たしか15人ほどなのだから
本命の会長と副会長
書記と会計の4人と
クラスの委員長と副委員長を
除くと9人しかいない
落選するのが
分かり切っているのに
立候補する国会議員が居ないのと
同じように誰もそんな面倒と
落選という恥もかきたくはないから
無役を目指して無益な
押し付け合いが
ひとりきり続き会長へと
立候補させられた
この時点でトラウマなのだけど
意外と選挙中は何事も無く過ぎ去った
何も難しいことは無い
すべての選挙運動をボイコットしたから
何も思い出すら残っていない
焚き付けた担任教師も
私のヘタレ具合に恐れをなして
クラスの委員長を推薦人か
もしくは御目付役として
私のサポート役に任命してくれたから
必要な準備の
すべてを委員長へと押し付けた
選挙ポスター制作やら
スローガンの立案などなど
もうお前が立候補しろよなどと
思いながら彼は不思議と
何から何まで文句も言わず
見事にやりきってくれた
その時本気で
クラス委員長じゃなければ
コイツが対抗馬になった筈なのに
なぜ春先に委員長に
してしまったのかと後悔した
そして投票日
当日は最後のお願いということで
全校生徒の前で演説をしなければならず
そんなの恥ずかしくて出来るかよと
仮病で学校まで休み
見事に落選したのだった
実質選挙運動など
自分では何ひとつまともにやらずに
落選してやっと面倒が無くなると
喜んでいたら天罰がくだった
会長に当選した生徒が
転校したのだ
学校の廊下には
まだ選挙結果が貼り出されたまま
確かに落選しているのに
担任教師に言われたのである
こういう時は
次点の候補者が当選だと
インチキじゃねぇか!
空気を読むのが日本人であり
クラスの雰囲気は彼だったのだ
頭も良くて運動も出来て
絵に描いたような
かっちゃんタイプの優等生
まさに会長に相応しい
こちらは人見知りで
アホなスイカ頭と呼ばれるような
ぽっちゃり癒し系な
たっちゃんなのに会長なんて
できる訳ねぇじゃん
選挙後すぐに
親の仕事の都合で
当選者が引っ越しなんて
そんなコントみたいな事が
現実に起こるのが
また私の人生らしいけれど
でもおそらく
一番焦ったのは担任だったと思う
彼には隣町の学校に通う
我々と同じ歳の子供が居て
自治体の運動会で
たまたま私がその子に勝った事を
根に持っていたのか
何かにつけて
嫌味を言われたりしていて
推薦の話も
無理やり誰かに言わせたような
そんなネガティブな
想像に変わるほど
嫌いな教師だったけれど
さすがに私が当選するオチが
あるとは思って無かったらしく
教頭先生に最後まで
コイツには無理ですと頑張ってくれて
その時ばかりは頑張れって
一生懸命に応援したけれど駄目だった
小学校とはいえ
イベントのたびに会長挨拶があり
学芸会とか運動会とか
卒業式の送辞は忘れたけれど
自分が卒業する時の答辞は
読むだけじゃなくて
その文章まで考えさせられた
その時も委員長や
クラスメイトが助けてくれた
生徒会のミーティングとか
よくやったはず何だけど
全く覚えていない
でも副会長の女子に怒られ続けたのは
何となく覚えている
考えたらあの一年間が
人前に立つ事が嫌いになった
きっかけだったな
こんなにも緊張するものなんだと
自覚したから答辞を読んだ時なんか
膝がガクガクして
我ながらカッコ悪かった