駅の改札口とは

一人だとただ通り過ぎるだけの

通り道に過ぎないのだけれど

誰かと過ごす為に出掛ける時や

共に過ごしたその人と最後の別れを迎える

ある意味では特別な場所でもある


特に夜の改札口では

名残惜しげにお喋りに

花を咲かせる御婦人方や

離れ難そうに見つめ合う若い男女

少し声の大きなほろ酔い

サラリーマンを見かける事が多い


しかしそんな

当たり障りのない人達に

興味を持つような

常識人ではないからなのか

どうしてもサラッと別れる人々の方が

遥かに想像を掻き立てられて

見ていて飽きないのである


たとえば二人で

腕を組みながら歩いて来て

改札で別れる二人組

一方はしばらくの間相手を見送り

見送られる方が

振り向くのかどうかを観察していると

半分以上の見送られる側の人は

振り向かない事に気がついた時に

その見送る人達に同情してしまった


本人にしてみれば

気にも止めない些細な出来事かもしれない

しかしその相手と親しければ

別れ際に振り返り手を振ったり

目が合って微笑むかどうかは

知っているはずだから


それでも尚

毎回相手の姿が見えなくなるまで

その後ろ姿を見送る

その感情とはどんな感覚なのか

そんな他人事を何パターンも

思い浮かべては遊んでいる


腕組みをして改札の前で離れて

有難うございましたと

お辞儀をし合うカップルは

マネーの匂いを感じ


繋いだ手を離す前に

ハグをするカップルにも

同じ匂いを感じる等と

適当な事を考えていると

案外と面白いもので


たまにそんな匂いを放つ人が

改札の向こう側へと去って行く

その背中をずっと見つめていたりすると

本当に申し訳無い感覚なのだけれど

それは無理だよと思う