このタコとか言われながら
ヤキを入れるなんて
昔よく使われた言葉だけれど
最近は面と向かって
言われる事はほとんど無い
ましてやヤキなんて入れたら
通報されてしまうから
たこ焼きでも食べて落ち着こう
その鬱憤をSNSで吐き出して
現実の人間関係では
波風立てずにやり過ごし
スマホがもたらす
娯楽に酔いしれながら
孤独の森で暮らしている
そんなタコ野郎にだって
幸福感に満たされる事は出来る
努力というと
頑張らないといけない
そんな脅迫観念を呼び覚まし
ここまでか?
もっと出来るんじゃ無い?
他の人達はもっと
頑張っているかもしれないぞ
なんて心の声がまだ足りないと
けしかけて来る
タコ野郎の気持ちなんて
柔らかいからね
スルリとヌルリとすり抜けては
信じられないくらい上手に
泥沼に逃げ込んでしまうから
そんな脅迫には捕まらない
けれど泥沼は
見えない障壁で囲まれて
いつかどこかで
すり抜けられなくなる
どれだけ体を折り曲げたり
薄く広げても出口が無い
来た方向へ戻るのも選択肢の一つ
けれど何かしらの我慢を強いられる
それは嫌だから
進めないなら上か下へ行けば良いと
下へ降りても泥だらけ
仕方が無いから上へ行く
泳げど泳げど
何も見えないのが泥の沼
ずっと上へ行けば
見えない障壁が無くなるかもしれない
そんな一縷の望みも諦めた時
疲れ果てどうにもならず
障壁に八つ当たりすると足が離れない
ずっと泥沼で過ごしていたから
自分の足に吸盤がついている事にも
気づかずに生きて来て
ヤケクソパンチなのかキックなのか
障壁に打撃攻撃をすると
今いる場所から
流される事も落ちる事も無く
体を固定出来る能力が
自分にはあった事に気がついて一安心
そんな幸運だって
この世には存在する
心を落ち着かせて
改めて周りを見てみると
泥沼だと思っていた景色が一変
先を見えなくしていたのは
自分の吐き出す墨だった
なんて事にも気づける筈だ
そもそも水の中を
泳いですら居なかった
八本の足は無くても羽があり
向かい風を受ければ受けるほど
上昇気流に乗って
どこまでも高く舞い上がる
いつか自分がそんな凧だった事に
気づける日が来ると良いなと思う
たこ野郎の独り言