他者にどう思われたいだろう
どう思われたくないだろう
対面恐怖症だから
他者に対しては常に意識して
波風立てないようにと
オドオドしているけれど
一人にされるのは好きだから
必要な情報さえ貰えれば
どんな気持ちだろうと
孤立させられても問題ない
むしろ清掃作業員という
まるでハードルのない立場でいるのも
他者に教えを請えないから
続けている側面もある
昔は嫌われないようにと
気をつけていたけれど
好かれてもあまり得することが無い
それどころか
会話をしたり連るんだりするのが
面倒だから好かれるのも苦手
一人で過ごせるという特技保持者は
恐ろしく他者に対して妥協を許さない
その声その仕草
そもそもの見た目や態度
言葉遣いや考え方など
人を認識する要素の
ひとつひとつに好き嫌いの判定をして
そのすべてに好きがない限りは
自分から近づかない
逆に一つでも好きがあると
それがどんな感触なのかを確かめたくて
まずは遠目に観察する
分かりやすく言えば映画を観る感覚
テレビっ子だから
現実の触れ合いよりも
フィクション作品から人を見て
育ったものだから
幼い頃はまったく人というものを
理解出来なかった
その違いが分からなかった
テレビドラマを見ると
暴力や暴言に溢れていたり
それこそ幼い頃は
離婚するのが当たり前みたいな
時代背景もあって
現実にも両親が離婚したり
住む場所がコロコロ変わったりと
まるでドラマのような現実が当たり前で
そんな環境で物心がつき始めたものだから
現実とフィクションの境目が
イマイチ理解出来ないまま育ち
実際に異世界とも思える
田舎へ移住したりという環境の変化が
目の前の人達には理解されず
マクドナルドすら上手く
説明が出来ない頃だったせいか
目の前の子供たちとも
何となく分かり合えなかった
幼稚園の友だちに
「お父さんはどこにいるの?」と聞かれて
鎌倉の大仏だと答えた時の
周りの大人達の顔は
何となく今でも覚えている
決して気持ちの良い
感覚ではなかったから
何となくそんな質問をされないようにと
その頃からもう
他者から逃げていたのかもしれない
自分の現実を誰かに話すと
必ず嫌な思いをした
一緒に住んでいても
全員が家族では無いと教わったけれど
今日からこの人たちが家族だと言われたら
家族なのだと言わなければ怒られた
食事中にお喋りすると
家から追い出され
黙って食べれば何も言われないから
それが当たり前になったけれど
学校ではお弁当を食べる時に
皆が机を並べて向かい合って食べるから
何となく落ち着かなくて急いで食べた
振り返ると
もうその頃には対面恐怖症だった
物心つく前までは
一人っ子だったものだから
一人が当たり前で
居場所が変わるたびに
行動範囲が広がって
公園に行っても
いつも知らない場所だから
一人で遊んでいた
それが当たり前で
それしか知らないものだから
特技である事にも気づかず
いつの頃からか
一人にならないと落ち着かなくなり
それがまた周りの大人の目には
可愛げのない子供に
映ったのかもしれない
ある日の小学校の帰り道
数キロ先まで見渡せる
真っ直ぐな田舎道の向こうから
自動車が走って来て
歩いている自分の隣に止まり
「おい!東京でっち、生意気言うな」と
一言吐き捨てて走り去った
そのままその車が
数キロ進んで
国道を左に曲がるまで
ずっと眺めながら
歩いて帰ったあの日の事は
おそらく一生忘れない
お前は家族全員に
嫌われているとわざわざ教えてくれてからの
捨て台詞だった
誰だったのかは覚えていないけれど
それを聞いてから
その家に帰るのは気まずかったな
他者にどう思われているのかは
それほど重要じゃない
嫌われて危害を加えられるほうが
怖かったから必死で
欲求を押し殺すけれど
奴らはゾンビのように何度でも
立ち上がるものだから手を焼いた
恐怖心はある意味便利で
自分の納得のいかない事を受け入れる為に
自分自身を脅したりもして
なんとか実家での生活では上手く
波風を立てずに解放された
両親に男は
一度は実家を出なければならないと
言われて仕方なく始めた一人暮らしが
今思えば人生の最高到達点だった
どうせ出るなら
自分を殺してしまいたかった
過去を全部無いものにして
知らない人に囲まれていたかったから
それから他者へ
自分の事を話さなくなった
聞かれてもわざと嘘をついていた
それはどう思われたくて
そうしていたのだろう
結局のところ
どう思われているかなんて
まったく気にしていない
むしろ自分が他者を嫌わないようにと
気をつけるので精一杯
嫌ってしまうと全否定だから
顔も見たくないし思い浮かべるのも嫌だ
どちらかというと教室で
執拗に誰かを攻撃するタイプだから
出来るだけ嫌いだと確信しないように
遠ざかるようにしているから
近づかれると腹が立つ
もうその時点で嫌ってしまう
どう思われるかよりも
どう好きになるのか
どうすれば嫌いにならないかと
ずっと考えて来たけれど
嫌うのは仕方ない
ただ危害を加えないようにしないと
犯罪者になってしまうから
逃げ惑う羽目に陥る始末
ただ基本的に
知らない人は嫌う理由がないから
ストレスなく触れ合える
知れば知るほど嫌うだけだから
限界が来る前に
サヨナラすれば問題ない
最近はもうそうすれば良いと
割り切ってしまう
それが一番気も楽だし
転職天国な世の中だから
流れ流れてどこでも行けば良いやと
思うことにしている