色白のせいなのか

若い頃よく目の下にクマが出来ると

「大丈夫?」と声を掛けられ

無意識に「大丈夫です]と答えた後に

鏡で確認すると

そのあまりの黒さに不安になり

いつしかクマが出ている事を

伝えられるのが嫌いになってしまった


当時は伝えてくる人を

死神みたいに思って嫌う割には

鏡を見るたびに

自分が死神みたいな顔をしていて

ちょっと面白かったけれど


感覚的には

疲れている訳でも無いから

そのクマを指摘されると

何となく陰鬱な気持ちになって

逆に気分が滅入ってしまった


一年もするも

周りの人達も見慣れたのか

あまり指摘されなくなり

それはそれで悲しく

もう少し心配くれても良いのでは

などと思ったりもして

感情とは何とも

複雑怪奇な現象を

引き起こしてくれるものだと

不思議な気持ちになった


それが寂しかったのか

ある時に鏡に映る

そのクマ達に名前をつけてみた

左がクマ子で右がクマ吉


我ながら

もっと違う名前でもとは思いつつも

愛嬌があって良いと思い

そのまま何日か呼んでいると

もう後戻り出来なくなってしまった


愛着とは案外と簡単に

気持ちに定着してしまうようで

それも可笑しかった


歳を重ねてからは

自分の最適な活動時間を見つけ

当時ほど彼らに出会う機会を失い

もう何年も忘れていたら

久し振りにクマ子とクマ吉の姿を

芸能人の顔に見つけて懐かしくなり

その芸能人のSNSに

彼等に向けたメッセージを

送り遊んでいる始末


自分以外には分かるはずも無い

彼等に向けたメッセージなのに

その返信にいいねをつける第三者が現れて

この遊びを理解出来る人が

この世の中にいる事を知って


この人も同じような経験を

した事があるのかと想像しては

また面白くなり

こんな遊びをするのは

自分だけでは無いのかも知れないという

勝手な思い込みを抱きながら

お疲れ様でしたねと声を掛けたくなる


もちろん今の宿主である

その芸能人にもお疲れ様と伝えたい


そして末永くクマ子とくま吉を

宜しくお願いしたいところではあるけれど

ご本人の健康が第一でもあるから

サッサと彼等から卒業してほしいとも

思っていたりもして

ホントにこの気持ちも複雑怪奇


この妄想の果ての

葛藤はなんなのだろうと可笑しくなり

久し振りに彼等と戯れ

楽しく過ごさせてくれた

その芸能人には本当に感謝している

そして無理はしないようにと願う


そんな余計な事しか考えない

今の自分の生活を振り返り

こんなゆとりのある暮らしでは

もはやクマ子とくま吉に

再会することはないのだと感じて

ちょっと寂しく思う自分がいる

それもまた面白い