決して交わることのない

その存在の中に立ち

それぞれの関係から学べるなら

何を学びたいだろうか


真冬のまだ夜明けの気配すらない

真っ暗な夜道を出勤していると

冬至を超えた翌日から

得体のしれない感覚のズレが生じ

何となく陰鬱な気分になる


その得体のしれない気分が

日を追うごとに薄れ

気づくといつもと同じ時間でも

空が白んでいるのが目に入ると

そうだったのかと納得が行く


違和感の正体は

おそらく日の出の時間のズレなのだ


毎日同じ時間の

地下鉄に乗るために家を出て

同じ道を歩くのに感じる感覚のズレ

白む空の色も変わり

次第に明るくなる速さも違う


気温も違えば湿度や風速

数え上げればきりが無いほどの違いが

この出勤途中の道すがらだけを

切り取ってもある訳だが

その日々や瞬間の違いにすら

気づけぬほど無意識の選択が

習慣や優先順位に流されている


常に移り変わり

同じ瞬間などありはしないのだ


出勤というこのありふれた時間も

少しづつ毎日変化している

春分を過ぎる頃には

この時間でも日差しが明るく

小さな変化にも気づけなくなる


眩い光に包まれると

小さな出来事には気づけない

当たり前に迎える

毎日の朝とは奇跡なのだ


好きな事して

好きな人と共に過ごす

学校や職場など

あらゆる社会活動の場があり

そこで不自由の少ない

生活が出来ている


不安や悩みは尽きない

会いたくても会えない人もいる

それでも今を生きるには

充分な環境の中で暮らせている


他人と比べたり

足りないものを探せば切りが無い

今この瞬間に自分自身を

心地良くする選択をするだけで

気持ちは暖かくなるのだから

無いものねだりをするのは止めよう


自分と世界のどこかで苦しんでいる人を

比べても誰も救われない


誰かの不幸が誰かの幸福ではない

それはまたその逆でもない

誰かの不幸を悲しむより

自分の幸福にフォーカスして

今日という一日を過ごしてみよう


日々の生活の中で

誰かの幸せを願う時

たとえば遠い異国の紛争に

自分が出来る事とは何か

そんな大それた事を考えても

何も出来はしない


本気でそんな事に

悩めるほど楽な毎日でもない

それでもほんのひと時

遠い異国で苦しむ人達を思い

何かをしたいと願う


決して出会う事のない

遠い異国の人達の幸せを願い

小瓶に手紙を入れて

海へと浮かべるように

想いを馳せる


今や鉄道会社は

他社間交流が盛んになり

レールを繋ぎ

地下鉄も太陽の下を走る


この目の前の現実が

世界への繋がりを感じる一歩に

なるかもしれないなどと

混み合う地下鉄の車内で

考えている内に扉が開いて

現実に引き戻される


そして今日も

いつもと同じ一日が始まる