実現したい事はなんだろう
一人きりの世界で
誰に称賛される訳もない
何かの成功を掴んで
誰彼構わずに
見せびらかしたい気はするけれど
そんなに有能でも無いから
妄想で良いやと納得してしまう
子供の頃に願った事は
大抵叶っている
無能の良い所は
気づくのが遅い事
あんな物があれば良いなと
思って探してみると大体売ってるし
無くてもそのうち待っていれば
誰かが作ってくれるから
それまでは一度忘れてしまえば良い
そんな感じで半世紀を過ごせば
ほらこの通り叶っている
学校なんか行かずに
テレビのアニメを1日中観ていたい
叶ってる
口うるさい両親なんかいらないから
一人でのんびり暮らしたい
叶ってる
田舎よりも都会は便利だから
引っ越したい
叶ってる
人付き合いなんか面倒だから
全部捨てたい
叶ってる
勉強なんかしなくても
とりあえず何かの仕事をすれば
生活が出来たら良いな
叶ってる
そもそも
人が願いそうな事なんて
願った事が無い
両親みたいになりたい
プロ野球選手になりたい
学者になりたい
宇宙へ行きたい
そんな事に興味は無い
ただ今ある現実を
もっと便利にしたかった
不安や違和感を無くして
何も押し付けられない
したい事だけして暮らしたい
想像力もなければ
悲しいほど頭も働かないから
自然に身体を動かす方へと
流れてしまう
幼い頃のは
学校の校庭に作られたスケートリンクを
飽きることなく
ぐるぐる回って滑り続けた
一周が何百メートルだから
何周滑れば何キロで
その距離はこの場所から
遥か遠くの街までの距離だから
毎日続けると世界中に行ける
本気でそう信じていた
ただ校庭のリンクを
ぐるぐる回る
変わらない景色なんて見もしない
あと何周すれば他の街へ行ける
そう思うだけで楽しかった
誰よりも早く滑りたい訳じゃない
行ったこともない場所までの
距離を感じたかった
リンクをぐるぐる回ると
ドキドキした
すべてを忘れられた
ずっとぐるぐる回り続ければ
いつか現実からも
離れられるかもしれない
何もかも空っぽにして
もっとラクに暮らせるどこかへ
行きたかった
それはまだ叶ってない