雇用の流動性

なんて言葉が闊歩する時代

清掃作業員の需要も

高まっているのか

退職を思い立ってから

1週間もしない内に

次の職場に採用された


元々フリーターに憧れて

責任なんか持たずに

のんべんだらりと暮らすのが夢だった


いろんな職業を転々とする

そんな能力もコミュ力も無いから

モクモクと作業が出来る

清掃作業員が性にあっていたから

職業は変えずに

所属する会社をコロコロ変えた

今では履歴書の職歴欄に

書ききれなくなって

しまってから省略してしまう始末


若い頃は

「そんなんじゃ信用を失う」と

いろんな人に言われ続けたけれど

失ったのは自分の信用では無くて

他者を信用する気持ちだった


「清掃作業員なんて社会のゴミだ」と

所属する会社の社員にはよく言われたけれど

客にも従業員にも嘘をついて

自分では手を汚さずに

無理な作業スケジュールを

押し付けられてよく怒られた


社会も実家と変わらないと思った


偉い人が周りにいる人を

怒鳴りつけ

脅して

心を縛る


恐ろしくて

ただ恐ろしくて

動けずに居た


ある時

何かを切っ掛けにキレた

このままでは

犯罪者になってしまうという

新たな恐怖心が

一番最初に転職する動機だった


ここに居る恐怖と

知らない場所へ行く恐怖

究極の選択だった


こんな自分が他の場所で

雇ってもらえるのだろうか

散々ゴミだクズだと

罵られ続けると

自分でもそう思ってしまって

逃げ出す勇気も持てなかったのに

別の恐怖が飛び出す力になった


あれから十数年

人手不足の時代に変わり

あっさりと退職して

すぐに別の職場へ移れる時代

なんて幸せなんだろう