商業施設の階段を

掃除するのが仕事で

その一段一段を

丁寧に掃いて行く


行き交う人達からすれば

邪魔な存在なのに

「お疲れ様です」とか

「ありがとうございます」などと

声を掛けられる事もある

自分の為にしている事で

「ありがとう」なんて言われてしまうと

なんだか悪い気がしてしまう


その階段の掃除は毎日どころか

一日に2回も掃除するから

それほど汚れない

汚れるとすれば誰かに汚された時だけ

だばこを吸ってポイ捨てされたり

飲み物をこぼされたり

季節や風向きなどによって

花びらや落ち葉が

吹き込んでくる時もあるけれど

基本的にはあまり汚れはしない


そんな階段を

一段一段丁寧に掃くのは自分の運動の為


とにかく階段の多い施設で

床だけでなく

扉のガラス面を拭いたり

手すりを拭き掃除したりもするから

一つの階段を何度か行ったり来たりする

受け持ちの階段が十数本あるから

手を抜かなければ

その本数だけ繰り返す


一つの階段はたぶん

五十段もないくらいだけれど

それを登り降りを繰り返し

十数本掃除するから疲れてしまう

一段一段丁寧に掃除しているのは

要は疲れない為の知恵

一気に登ると疲れるから

一段一段ゆっくり掃除をして

体力を温存する

言ってしまえばサボっているのだ


そんな事は知らない

通行人達に

「お疲れ様」とか

ましてや「ありがとう」なんて

言われてしまうと

なんだか申し訳ない気持ちになってしまう