よくよく思い出してみると
いつも疲れたと言っていた親を見て
働きたくないと思った
どうしてそんなに辛いことを
続けるのだろうと不思議に思っていた
酪農業を自営していたから
年中無休で働いていた
母親は家事しかしないから
父親が一人で働いていた
家族経営の農家としては
かなり変わった家で
大抵の場合
夫婦やその親世代が
みんなで作業を分担するのが
一般的だけれど
仲が悪かったから
祖父母も協力してくれず
母親も家事以外はしないというのが
家のやり方だった
一人きり年中無休で
働き続ければ疲れもするだろう
その姿を見ても
まったく可愛そうだとも
手伝ってあげたいとも思わなかった
ただ巻き込まれたくなかった
夏休みは母親に
父親の手伝いをしろと言われ
「まずあなたが手伝えば?」と言ったら
アルバイト代を払うの言われ
欲に駆られては手伝ったけれど
父親や祖父母と顔を合せるのが嫌だった
手伝いとは言っても
主に牛小屋の掃除や餌やりで
朝の搾乳が終ると放牧し
その間に牛の寝床の掃除をする
糞尿で汚れた藁を
ベルトコンベアーで運び出し
きれいな寝藁を敷く
それぞれの牛の餌を配り
最後に全体を掃除する
ガサツに作業をするものだから
そこら中に藁だの餌だのが
散らばっているから
それらを竹箒でひたすら掃き集める
ただ掃き掃除をしただけなのに
床に何も落ちていないだけでも
清潔感があり
体を動かした爽快感も相まって
気持ち良かった
こんな気持ちが良くなって
さらにお金ももらえるなんて
なんて素晴らしいんだと感動した
それが掃除を好きになった理由