すべての望みが叶った状況を

想像してみても

結局何も思い浮かばない

それどころか

これまでの嫌な体験を

思い出してしまう始末


あの頃は良かったなんて

思える過去はないし

もう一度人生をやり直せるなら

どこへ戻りたいかと問われても

思い浮かぶ時期がない


そんなに不幸な人生だったのかと

自問してみると

言うほど酷くもなかったかな

とも思ってしまう


感覚が全てだから

常に今に行き着いてしまう


そもそも

過去を振り返るなんて事は

とても贅沢な時間で

今現在なんの問題もないから

そんな事を考えていられる

目の前が危機的な状況だったら

そんな事を悠長に考えられないだろう


想像力がないから

理想は常に今になってしまう


年齢を重ねると

体験の数も増えて

全く新しい状況にも

赤ん坊のようには出会えないから

大抵の問題は過去の経験から

無意識に対処法を見つけて

好き嫌いは有るにせよ

お先真っ暗みたいな

気持ちにはなかなかなれない


その問題の対処法を

知ってるつもりでいるから

勘違いでも

どこか安心感がある

だから同じ様な問題が

何度となく繰り返されても

今が一番良いと思えてしまう


理想の中には

何も問題がなくて

心配事もないと

思いがちだけれど

それは単純に絵空事で

現実は常に

負の要素が含まれている


そっちの道の先には

地獄があると知っていれば

誰も行かないけれど

何があるのか分からなければ

天国にたどり着けると思って

足を踏み入れてしまう

人生とはそこから先の物語


いろんな体験をすることで

土地勘を養って

そっちの道へは行ったことがなくても

例えば周りの景色を見て

安全かどうかを判断できるようになる

勘違いでも

自分の判断でしか

行く先は決まらないから

何となくいつもと同じような

状況に落ち着くのが現実


だから

今が一番安全に暮らせる筈で

ということは

今が一番理想に近いってことに

なってしまう

なんて安上がりな理想なんだろう