優れた芸術家には

完成した姿が見えると言う


例えば彫刻家は

石や木を削り

作品を創る時に

その姿になるように

不必要な部分を取り除く

作業をしているらしい


何かを創り上げる作業は

積み上げる感覚だけではなく

取り除いて行くという

感覚でも良いらしい


最近はもう

あらゆる境界を

無くす方向に向かって

時代は進んでいる


ジェンダーレス

キャッシュレス

ワイヤレス

あとはなんだろう


とにかく手放す事で

完成に近づくイメージ


断捨離なんて言葉も

よく聞くから

その言葉に乗せられて

実際に

色んな物を捨ててみると

これが意外と

気持ちが良いもので

部屋の中からどんどん物が

減っていく今日このごろ


過去を振り返って

面白いのは

自分が子供の頃

もうすでにいらない物を

手放すことで

自由になれた

成功体験をしていた事に

気づいたからだ


40年以上も前の

幼い自分は

あまりにも

時代を先取り過ぎたから

息苦しく

感じていたんだと思う


私が最初に

捨てたモノは

なんだったろうと考えて

それを言葉にすると

小っ恥ずかしいのだけれども

やっぱりそれは

愛だと思う


愛情とは何か

それは始まりだと思う

すべての出発点が

愛だ


ずっと嫌われないように

生きて来たけれど

結局何も手にする事は

出来なかった


占いや自己啓発の本

学校やテレビの凄そうな人達が

揃って言っている

どんな宗教でもおそらく

世の為他人の為に

事を成せと言っている


自分の為では

限界があるけれど

他者への奉仕に限界はない

他人を大事にしない人間には

他人は寄り付かない

だから他人の目を気にして

敵を作らず

穏便な人間関係を築きなさい

そうすれば夢を叶えられる

みたいな事を

色んな人が教えてくれる


だから

そんな存在になる

努力はした


その方向性が

間違っていたのかもしれない

確かにその可能性もあるけれど

いつも超えられ無かった壁には

実は門や扉がついていて

その存在に気づいている人は

当たり前に

ノックして中へ入れてもらえる


でもそれに気づけないと

ひたすら登る努力をするか

遠回りをするかのどちらかを

選ばなければならない


どちらにせよ

その壁に頂上があるのか

分からないし

迂回しても終わりがあるとは

限らない無謀な挑戦を

強いられる


終わりの見えない

戦いはどこかで

心が折れてしまうから

いつまで経っても

何も手にすることができない


繋がりというチケットを

持っていると

何不自由もなく過ごせるのに

そのチケットが無いだけで

すべての事に枷がついて回る


そのチケットとは

なにか

それがきっと愛なんだと思う


全体像の見えない壁を

超えるには

自力で超える力を手にするか

もしくは向こう側から

迎え入れて貰うしかない


愛は欲求だから

仲良くしたいという思いがあれば

努力なんて必要ない

こちらとあちら

双方に思いが通じ合えば

そもそも壁なんて存在しないから

自由に行き来ができる


けれどその欲求がないと

そこに他者が存在している事にすら

気づかずに

一心不乱に壁をよじ登るから

あらゆる存在が抵抗勢力になって

自分の行く手を阻もうとしてくる


そこで他者の存在に

気づければまだ良いけれど

例えば

向かい風の中自転車を

漕いでいるような感覚に

なってしまうからたちが悪い


その風の力を

利用して上昇することも

時には出来る

それで壁を超えてしまうと

枷の重みが増すだけで

あまり喜びが持続しない

だから次の壁超えを目指してしまう


今度こそ

今度こその

繰り返し


いつしか心が

擦り減って

小さな小石にすら

躓く始末


どこで間違ったのだろうと

振り返っても

なかなか間違いに辿り着けない

そりゃそうだ

最初の一歩を踏み出した

方向が間違っているのだから

最初からやり直すしかない


百万個のボタンが

並んでいるイメージ


初めのボタンを掛け違えると

全部はずさ無ければならない


自分で愛を捨てたと

思っていたけれど違っていた

捨ててはいなかった

いやむしろそれをずっと

大切にして育てていた


大事に大事にして

心の底の奥の方に

がんじがらめに閉じ込めて

何者にも触れられないように

隠し続けていた


あまりにも巧妙に

隠し過ぎたお陰で

自分でもどこに閉じ込めたのか

分からなくなってしまった




太ったり

痩せたりを繰り返して

行くうちに

痩せるほうが大変なことに

気がついた


意識しないでも

太れるけれど

痩せるには沢山の要素が必要で

食生活や食べる量や時間

運動しても

何をどれくらいとか

まぁとにかく

考えなければならないことが

多すぎる


しかも

長い時間を掛けて

じっくりゆっくりにしか

痩せないから

気持ちの制御も難しい


痩せている最中には

色んな思いが頭をよぎる

記憶や感覚が撹拌されて

時系列が崩壊

不意に昔の記憶が

フラッシュバックするなんてことも

ざらにある


そんな現象の一つで

愛の在処を知ることになった


愛されなければ

ならないと思い込んでいた

それは権利ではなくて

義務だと思っていた

愛されない存在は

幸せになれないと思っていた

でも違った


自分の中に

愛されないなんて

欲求は無かった


すべての他人に愛されたい

なんて

これっぽっちも思ってない

私が欲しているのは

愛したい

心の底から全身を使って

愛したい

そして愛する他人に

愛されたい


愛情は外に向けずに

ずっと内側へと注いでいた

愛される実感が

分からないから

愛し方も分からない

だから結局

無感覚に愛情だけが

空回っていた


愛を捨てたと

勘違いをした時に

自分を世界から

切り離した


自分とそれ以外に

別れた世界で生きる感覚

愛する存在からの

愛情しか求めていないから

ずっと自分を見つめていた

それ以外の存在が

居ないから

そうするよりほか無かった


今も過去も

現実には他者と共存していて

家族やクラスメイト

同僚といった存在は確かに居た

けれど

感覚の世界では

常に一人だから

人と風と宇宙に

それほどの違いはなかった

だってそれはすべて

自分ではないから


世界から自分を切り離してからは

ひたすら壁をよじ登ったり

迂回したりの連続で

とにかくすべての不快感から

逃げ続けている

傍から見れば自分のしっぽを

追い回している犬みたいに

見えるに違いない


ダイエットをすると

よく鏡を見るようになった

裸の自分の全身を

まじまじと見つめて

天才芸術家の如く

不必要な脂肪を取り除き

必要な筋肉へと変換していく


理想の身体に近づくたびに

心のしがらみが

解けて行くような感覚に陥って

ガラクタは断捨離し

スペースを創り

必要な物を揃える

準備をする気持ちになる


今は公園デビュー前の

赤子のような存在

あの頃欲した親という存在に

自分が成り代わり

心を赤子から育ててみようと思う

今日このごろ


芸術家ではないから

完成した姿がイメージできない

だったら行き当たりバッタリでも

良いじゃない

これまでだって

どこでバッタリ

倒れてもおかしくなかった

それはこれからだって

変わらない 


ボタンは全部外し終わった

今度は掛け間違わないように

しようと思いながら

間違えながるのが悪い癖

ならば

それもすべて受け容れよう


目的はただひとつだけ

過去の辛い瞬間を乗り越えてくれた

自分への恩返し

幸せになれる選択をし続ければ

自ずと願う結果はついてくる


頑張るな

楽しもう

行きたいと思う方を

選んで行こう