思い出は一生もの

例えそれが

思い出したくも無い事でも

いやむしろ

忘れてしまいたい事の方が

忘れられない


悪口を言われたり

馬鹿にされた人の事は

忘れない

嫌いになった理由は忘れても

その人の事は忘れられない


見た目も声も

仕草や話している内容も

すべてに苛立ってしまう

何年離れていても

不意に思い出すだけで

すぐに不愉快になってしまう


そもそも

良い思い出なんて

数えるくらいしかない

しかもほんの些細な

出来事の記憶しかない


街中で当時憧れていた人と

すれ違った時の記憶

デパートの登りと下りの

エスカレータですれ違い

一瞬

視線が交わった瞬間に

胸が高鳴った記憶


二十年が過ぎた今も

そのエスカレータに乗る度に

思い出しては心が踊る


他人が苦手と

言いながら

あの刹那の姿が

今も忘れられない


思い出なんて殆どが

忘れてしまいたいと思う

事ばかりだけれど

それを捨てられないのは

あの一瞬

ほんの些細な輝きを

失いたくないからかもしれない


あの一瞬のときめきのお陰で

この人生が素晴らしいとさえ思える

たった一度

一瞬目が合っただけなのに

今も思い出すたびに

幸せな気持ちになれる


この思い出を

失いたくないから

他のろくでも無い

思い出も捨てられない

それも幸せな事だと

最近は思うように

なってしまった