絆とは

共に過ごした時間

好む好まざるを問わず

無意識に刻まれる


家族には

会わなくても

その存在は

無意識に刻まれ

いつも自分の言動を通して

感じられる


血の繋がりがあれば

鏡で顔を見るたびに

その存在を感じる


その無意識の存在感は

時には背中を押し

時には心を縛り付ける


家族の存在とは

自分自身

無意識の領域に

常に存在している


感覚の世界で生きている

自分には

家族の存在感が大きすぎて

直接会ってしまうと

心が揺れる


頭を押さえつけられ

心を縛られる

目の前に誰が居ようと

恐ろしく感じるのは

幼い頃の感覚が今も鮮明に

残っているからだろうか


ある時から

家族間での争いが

ぷつりと消えた

まるで無かったかのように

笑顔で接せられた


自分に向けられる

その笑顔に違和感を抱き

家を出るまでしっくり来なかった

そのまま心は離れ

違和感が大きくなり

いつしか現実に飲み込まれ

家族と会うことが億劫になった


罪悪感や恨みに

取り憑かれた時もあったけれど

会わなければ忘れられた


連絡が来る度に

心が揺れて

落ち着かなくなる度に

家族が億劫になる


会わなくても

その存在感は大きく

背負い切れない


家族と距離を取り始めて

忘れられる時間が

長くなる度に心が軽くなったが

それとは逆に

自分の言動の中に

苦手な家族と同じものを

強く感じるようになった


絆や縁などというものは

一度繋がってしまうと

失うことは出来ない

幼い頃に抱いた

家族の自分に対する

態度の変化への違和感


罵詈雑言浴びせた

家族とは別人のように

なった彼等を好きには

なれなかった

恐怖で縛られた関係性が

無くなり気持ちが宙を舞った


好き嫌いなんて

考えたことがない

そこにいる事しか

選択肢が無かった

自分がどうして

今ここにいるのか

何がしたいのか

唐突に恐怖のハシゴを外されても

何処へも行けない子供だった


命令どおりにすることしか

知らない人形が

自由を与えられ

それを使えるようなるまでは

時間が掛かった

本来は家族の背中を見ながら

或いは先人の行いを真似て

踏み出せるのが人間だけれど

恐怖にしか縛られない人形は

知らず知らずに

恐怖を与えてくれる存在を探した


自分を虐げる存在を

嫌いながらも

恐怖での繋がりに

安心感があった


無限の力がある人形なら

そのまま働くことも出来た

けれど人形のフリをした

生身の人間には限界があった


限界の先に進む為に

心を持つことを選んだ

その頃から自分の中に

家族の存在があることを知った


無意識の中にいるならば

会わなくても良い

都合好く解釈をして今に至る

それで良いと思う

自分が求める心地良さを

実感するにはそうするしかない


絆は消えない

捨てることも出来ない

切る事も

無かった事にも出来ない

どんなに恨み嫌っても

それは変わらない

逆に何をどうしても

失えない事に

今は少し安心している