デジタルデトックス

なんて言葉が生まれる時代

ライトユーザーの自分ですら

スマホは手離せない


作業員だから

仕事中は意識が離れるけれど

会社スマホには連絡が来るので

逆にストレスは増える


自然豊かな場所へ出掛けたら

スマホの電源を切ろうなんて事も

チラホラ見聞きするけれど

写真を撮るからそれも無理


そんな言い訳ばかりを

並べている人間なのに

自然とスマホから意識が

遠くなる時がある


チョモランマよりも

高いエンゲル係数なのに

休日のランチには

お金を注ぎ込んでいる


近所に

素敵な洋食屋さんを

見つけて

ハマってしまった


一食に1500円を支払うのは

とても辛く厳しい手取り何だけれど

出勤日の昼食は一つ80円

運が良ければさらにその4割引きの

おむすびを食べて節約し

休日の度に通っている


ご夫婦なのかは分からないけれど

中年男性シェフが一人と

女性一人だけの小さなそのお店の料理は

とても美味しい


コース料理なんて食べたこともないから

それだけで舞い上がってしまったけれど

とにかく美味しい

いつもスポーツジムで

トレーニングをした帰りに寄るから

少し少なめの料理がちょうど良い


車の往来が多い国道沿いにあって

窓越しに行き交う車を眺めながら

食後のコーヒーを飲むのが

堪らなく好きだ


静かな店内にいると

車と音が絶え間なく聞こえ

歩道を歩く人達の

笑い声なんかも聞こえる


美味しいものを味わうと

なぜか視線を遠くへと移してしまう

奥のボックス席に座り

陽射しが差し込む窓から

外を眺めるその瞬間

とても満ち足りた気持ちが

身体の奥の方から湧き上がる


目を閉じて

行き交う車の音

通り過ぎる笑い声

口の中に広がる幸福感に

心が包まれ時が止まる


あの瞬間だけは

スマホから心が解放されている

何度通っても

馴れ馴れしく話しかけて来ないのも

コミュ症にとっては魅力で通いやすい


自分がそういった時間を

求めるような人間だったのかと

驚きつつも

少し無理をしてでも通う価値を

見出しているのならそれで良い


意識が離れたその瞬間の

何とも言えない心地良さが

忘れられない

まさにデトックス


「そんなにストレスなら

スマホなんて持たなければ良いのに」と

心の中での軽口をたたきながら

同時にこれなしでは

生活が成り立たないくらい

依存していることに気がついて

感謝をしなければと襟を正す

そして大抵

帰りに近くの神社へ

お礼参りをしてから家へと帰る