その日の内に
母親は家へと戻って来た
駅に見送りに来ていた
友人に説得されたらしい
母親と別れて
家へと帰る途中
何度も父親に
「お母さんについて行け」と
言われ続けた
その時に父親も捨てた
結局
誰も自分と暮らしたくない
そう言われているように感じた
一人でいることのほうが
気楽だし
争い事にも
巻き込まれないのなら
それで良かった
家に帰ると
父親が
祖父母や近くの親戚たちに
なぜこの子がいるのかと
聞かれていた
なんの縁もないこの子を
育てる義理はない
そう思われているに
違いないと感じた時
家族を
親戚を捨てた
母親と別れてから
夜ベッドに入るまで
涙が流れ続けた
気持ちは落ち着き
恥ずかしいから
早く止まれと願っていた
涙腺が崩壊していた
何時間の間に
受け容れてもらえないのなら
誰にも頼らずに
一人で生きなければならない
何となくそんな覚悟を決めた
母親も父親も
家族や親戚も
人間関係すべてを諦めて
一人になった
涙も止まり
まだ眠くもないけど
ベッドに入らされ
眠ろうとしている所に
母親がその友人に
連れられ帰って来た
父親が階段を駆け上がって来て
「お母さん帰ってきたぞ」
「良かったな」と言ったのは
ハッキリと覚えている
その後の記憶はない
そのまま眠り
彼らが何かしらの
話し合いをして
離婚は白紙に戻された
涙腺が崩壊した
この数時間
気持ちが切り替わり
僕の中から
世界が切り離された
というか
世界から自分を切り離した
のかもしれないけれど
人と繋がる糸を切り
風船ように宙に舞う
心を閉ざす
という言い方でも良いかもしれない
誰とも繋がれないのなら
それも良いと受け容れ
何となく今も生きてる