19歳になる年に一人暮らしをはじめた
へんぴな田舎から
引っ越して慣れない都会暮らしに
少し恐れおののいてはいたものの
心は晴れやかだった
まるで無重力のように気持ちが軽くなった
最初はなんでこんなに
気持ちが軽くなるかわからなかった。
ただこの場所に
自分を知っている人が
誰もいない事が嬉しかった。
実家での暮らしに不満を抱いた事はない
家の手伝いをして
学校に通って部活の練習をする
そんな毎日が嫌いではなかったし
辛く感じた記憶もない
ただ両親や学校の教師
クラスメイトとの交流が苦手で
一人でいる事が好きだった
一人暮らしをはじめて
一人の時間のみの生活になってこんな快適な
世界があったのかと感動した
そしてはじめて
実家での暮らしが辛かったのだと自覚した
あの環境は自分にとって重荷だった
両親を恨んでいる訳でもなく
周りの人間関係が悪かった訳でもない
ただ苦手なだけだと思っていた
その苦手な環境に居続けるという事が
自分にどれほどの負担を強いていたのかを
一人になって初めて実感したのだと思う
だから今も
無重力の生活を続けている。