Kさんは重そうなザックを担いでいます。
室堂から剱御前子舎までの通称、雷鳥坂は約2時間のひたすら登りが続きます。綴ら折れの道で下の角をやっと曲がるところです。
テントを新しく買ったKさんは剣沢でテント泊り、
食材も3日分背負っています。
私達もゆっくり登ってますが、上から見下ろすと背中を丸めて、その上に重荷がのしかかって居るようです。
自分で選んだテント泊りのスタイル、私達はジッと見守るだけ
登りで辛そうのKさんは、汗で着衣も乱れ、待っている私達の所へ到着しても、聞こえるのは息使いだけで、無言です。
頑張って自分の登山スタイルで登り続けています。
剱御前子舎到着を大幅に予定時間を過ぎて到着です。
見上げると、遠方から参加されたTさんがこちらを見て手を振っています。MTさんは前日に室堂に到着して浄土山と立山三山を越えて御前小舎で合流、首を長くして待っていてくれました。
「ここで小休止で~す。」
私とTさんはコーラを飲んでエネルギー補給、
他の皆さんはトイレタイムや山々を展望
これで今回の剱岳登山の全員が揃いました。
十分に休んで剣山荘への道を下ります。
雪渓が残っていたり、大きな岩を回り込んだりして
山の全容が見えて来ました。
その下には今回の宿泊である剣山荘も見えています。
「もう少しです!」
剣沢エリアは雪渓が残り、水が豊富な所のため、小屋でシャワーが使えるので、本当に有難い小屋です。
明日、小屋朝食時間などを確認後Kさんと合流時間や装備品などの
打ち合わせ後Kさんは剣沢テント場まで人歩きしますので、小屋から離れて行くけさんの足取りは若干重そうなので少々心配でした。
私達は小屋の裏で、
カラビナ取扱いや鎖の想定訓練の様なことを実施しました。
MTさんOさん、そしてTさんの3人と一緒にロープを繋ぎますので、
各自の呼称の明確かつ簡素化が必要です。
「今カラビナを外しますから、ちょっと待ってください。」・・・こんな長い言葉では誤解が生じたり、分かりにくいので
結果的には「お願いします。」と「オッケー」とやや暗号化され、
セルフビレ-(自己確保)を完了した時には・・・「MTセルフオッケー!」となりました。
(写真中央の」ピークは鹿島槍ヶ岳です。)
夕食を済ませて部屋で山談義で8時には消灯でした。
Kさんは無事にテント張って自炊が出来たでしょうか?
8月20日
朝5時起床で外は予想通りの好天
朝食は皆さん食欲旺盛で頼もしい限りです。
外で準備中、Kさんもやって来ました。
そして・・・
剱岳に登る皆さんの半分以上がヘルメットとハーネスを着けているように思えます。ハーネスが目に入ってそう思えたのかもしれませんが、
安全に対しての意識が高くなって来たことと思います。
私達も完全装備で出発
Kさんはロープは結ばないでの登山を希望され、ほかの皆さんとはシッカリロープで結ばれ転落防止スタイルです。
剱岳の鎖はステンレスのしっかりした物です。
鎖場は危険な個所に設置されますが、鎖が有れば難易度も下がり登山者にとっては嬉しいものです。
私のすぐ後ろを歩く0さんはシッカリと追従して来ます。
ペースも上がり気味となり、前剣まで登るころにはMTさんの荒い息使いが気に成り始めて、山頂で隊列の順番を交代します。
目の前に本峰を見て、少し長めに休んで居ると・・・
「私はここで待ってます。」・・・MTさんから声が掛かりました。
(MTさんに申し訳ないことをしました。ペースを落とさないといけません。)
皆さんから励まされて気を取り直したMTさん、私もホッとしました。
ここまでオーバーペースで頑張って来たのですね。
誰にも登る適速度というものがあります。
反省です。
そし見るから危なそうなトラバース(横移動)の鎖の設置個所
昨日の戦略で行けば問題なくスムーズに通過できますが、緊張は高まっていますが足場はシッカリしていますので、
落ち着いてお願いします。
確実にロープで確保、
最後尾のKさんもカラビナを掛けてカラカラやってます。
登ったり下りたり忙しいエリアを通過して一休みします。
休みのときは必ず上を確認しなければなりません。
落石の危険回避ですね。
目の前に広がる岩、岩、そして岩の世界です。
カニのタテバイを登っている人が見えます。
まさに岩の殿堂、剱岳です。
こんな景色を見ながら休憩しているみなさんの心持ちは?
見えない所で休んだ方が良かったかもしれません。
少し休んで出発します。
後続の若いカップルに先に登って貰います。
お二人も鎖ににカラビナを掛けて一つ一つ丁寧に
各ピッチを登っています。
私達も登り始め、途中で・・・
「鎖にセルフビレ-を取ってください。」
皆さん鎖にセルフビレ-を取って一呼吸やってます。
良ければ登りますよ。
最上部で・・・
「確保してますから安心してくださ~い。」
幸い風もなく声も良く伝わります。
そしてトラバースを終了して最後のザレ場登りです。
昨年はみんなで1・2・3・4と声を出して登った思い出があります。
あの時は辛そうだったな~、良く頑張って登りました。
良い思い出です。
今年の皆さんも頑張ってます。
あと少しという所で、
知り合いのガイドグループが下山して来ました。
「登頂したんですね、おめでとうございます。」
「信じられません。」「頑張ってください。」
そして全員の登頂です。
霧の中の山頂です。
しかし、皆さんの達成感でいっぱいでした。
喜び方もまちまちですね。
Kさんは両手で、緑のTさんは目一杯手を挙げて、
白のOさんは懐かしいピースサイン、
オレンジのMTさんは冷静なお人?それとも照れ屋さん?
石にどっかり腰を降ろして大休止
この時間のために2泊3日で計画しました。
ゆっくり山頂を味わいましょう。
各自お弁当を食べたりしていると・・・
「雲が切れた~!」
立ちあがって写真に夢中
早月小屋も姿を見せてくれました。
今度はこっち・・・・と忙しい山頂
雲の切れ間に翻弄され、
まるで神様の悪戯としか言いようがないような雲の動き
エネルギー補給が済んで、
コーヒーを入れて
穏やかな剱岳のみんなで味わうことが出来ました。
今年も良い剱岳の山頂だった!良かった良かった!
下山は慎重に一歩一歩下ります。
すると掛け声がして、左を見ると南壁の岩稜を登るクライマーの姿
色んな山の楽しみが有りますね。
左は深い深い平蔵谷です。
よそ見は禁物です。
目の前の恐竜の背のような平蔵の頭
そして
金属のしっかりした梯子を降りたTさんから
「Tはセルフオーケー!」
そしてOさん、MTさんもシッカリとセルフを取ったようです。
「私が落ちても当らない場所で待機お願いしますよ。」
上手く号令が交わされています。
こんな号令は自分自身の安全の確認と落ち着きに役立ちます。
私も時々「セルフ良し、セットしたロープの流れを見て確保良し・・・」と心で確認の呼称をしています。
下山でも2回ほど休憩をして、糖質の固まりであるレーズンなど食べたりして下って来ました。
もう小屋はすぐそこです。
雲行きが怪しくなってきました。
ポツリ、ポツリと雨が・・・
小屋に着いてシャワーを浴びてる最中にザーと振って来ました。
「グッドタイミングですね!」
部屋で休んで外を眺めて、良かった良かった!
夕食は思い思いのドリンクで乾杯!
良い1日でした。
8月21日
下山の日です。
大きな看板の前で記念撮影
剣沢のテント場で待つKさんと合流します。
途中、チングルマが咲き残ってました。
MTさんは撮影に余念がないです。
Kさんのテントは何処?
この岩壁のどこかでクライミングの準備がきっと・・・!
剣沢の雷鳥も
そして光と陰によってくっきりとした姿の剱岳
御前小屋でお別れを告げた剱岳
3日間、好天に恵まれました。
ひんやりしたトンネルのバス
参加された4名の剱岳登山は無事に終了しました。
各自それぞれの思い入れが有って
それぞれのスタイルで
重い、辛い、危ない、休みたい!
今回の剱岳登山も
そんな言葉を乗り越えて成功できました。
きっといつまでも記憶の中に残り続けるかと思います。
Kさん、重いザックを背負って自力で登りました。
遠方から来られたMTさん、頑張りましたね。
もう二度と登ることが無い剱岳と言っていたOさん、
また登ってください!
不安な気持ちで先頭を下ったTさん、
一番気と使って疲れたのはTさんかも知れません。
皆さん、お疲れ様でした~!
剱岳も良い山ですね~!
山ってやっぱり良いもんですね!
改めてそう思います!
登山・トレッキングのガイド「風」 (HPも宜しくお願いします。)
・・・
「風」のガイドプラン ← (こちらも宜しくお願いします。)