確定申告の医療費控除とマイナンバーカード
所得税で医療費控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。従来は、以下の2つが手間になっていました。
①確定申告時に医療費額を集計して添付すること
②領収書の保管義務
令和4年(2022年)分の確定申告から、マイナンバーカードを紐づけることで、以下のようになりました。
1️⃣1年分の医療費通知情報をマイナポータルで取得できるようになり、集計・入力の手間が簡略化できる。
2️⃣マイナポータル連携の場合は領収書の保管義務も免除。
マイナポータル連携による医療費情報の取得
医療費控除の手続きを詳しく書くと、原則として「医療費控除の明細書」を所得税の確定申告書に添付する必要があります(上記①)。
医療費控除の明細書は、領収書ごとに1件ずつ入力するか、または「医療を受けた人」「病院・薬局などの名称」ごとにまとめて記入する必要があり、手間がかかります。
マイナポータル連携を利用すれば、確定申告時に上記の情報が自動で取得できるため、明細書の作成が不要となります(上記1️⃣)。医療費控除の手続きに要する手間が大幅に軽減される効果が見込めるのです。
マイナポータル連携とは
マイナポータル連携とは、政府が運営するウェブサイト「マイナポータル」を利用し、所得税の確定申告手続きなどについて、必要書類(控除証明書など)をデータで取得し、該当項目へ自動入力する機能のことです。
マイナポータル連携によって医療費控除の手続きをするには、
「マイナンバーカードの取得」
↓
「マイナンバーカードと健康保険証の一体化」
↓
「マイナポータル上での事前設定」
という流れを踏む必要があります。
また、マイナンバーカードをマイナポータルに認識させるとき、マイナンバーカード読取機能のあるスマートフォン(またはICカードリーダライタ)が必要となります。
国税庁 マイナポータル連携特設ページ(マイナポータルを活用した控除証明書等のデータ取得と自動入力)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/mynapo.htm#:~:text=%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AB%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E5%B9%B4%E6%9C%AB%E8%AA%BF%E6%95%B4%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%82%84%E6%89%80%E5%BE%97%E7%A8%8E,%E8%87%AA%E5%8B%95%E5%85%A5%E5%8A%9B%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
国税庁 マイナポータルと連携した年末調整手続 マイナポータル連携を利用するための流れ
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/mnp_junbi/nenmatsu.htm
医療費をマイナポータル連携するメリット
医療費をマイナポータルで連携するメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
①入力する手間が不要になる
上述のとおり、医療費控除を受けるには、原則として「医療費控除の明細書」を作成し、所得税の確定申告書に添付する必要があります。
その明細書には「医療を受けた方の氏名」「病院・薬局などの支払先の名称」「医療費の区分」「支払った医療費の額」などを記入する必要があります。つまり、「医療を受けた人」「病院・薬局」「医療費の区分」ごとに集計をする手間、もしくは全てを羅列する手間がかかります。
マイナポータル連携で医療費情報を取得すると、必要事項が自動入力されるため、その手間が省けます。
②領収書の保管義務が免除される
医療費控除を受けた場合、医療費控除の明細書を作成した上で、その根拠となる領収書を5年間保存する義務があります。平成29年(2017年)分の確定申告から、この領収書の提出までは不要になりましたが、申告後5年以内に税務署から求められた場合、提示または提出できるようにしておく必要があります。
この点、マイナポータル連携を利用して取得した医療費通知情報に含まれる医療費については、領収書を保存する義務が免除されます。
③家族分の情報も連携できる
マイナポータル連携によって取得できる医療費通知情報は、通常は本人分だけです。一方で、医療費控除においては、本人だけでなく生計を一にする家族等親族が支払った医療費も控除の対象とすることができます。
家族分の医療費もマイナポータル連携によって取得したい場合、あなたと家族の間で「代理人設定」をすることで、家族分の医療費通知情報も取得することができます。ただし、家族もマイナンバーカードを取得していることが条件となります。
マイナポータル 01全体概要 代理人とは・代理人ができることhttps://img.myna.go.jp/manual/03-07/0115.html
国税庁 医療費控除を受ける方へ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/r04junbi/iryouhikoujo.htm
医療費をマイナポータル連携するときの注意点
医療費をマイナポータル連携する場合の注意点は以下の3つになります。
①生命保険等で補填されるものがある場合
実際に支払った医療費であっても、加入している生命保険等で医療費を補填される場合には、支払った医療費から差引計算する必要があります。保険金の請求情報や、受け取った保険金がどの医療費と対応するかということまではマイナポータル連携では反映されないため、手動で修正する必要があるのです。
ただし、生命保険等によって、実際に支払った医療費の金額を超える給付金を受けたとしても、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
国税庁 保険金などで補てんされる金額とは
https://www.keisan.nta.go.jp/r4yokuaru/cat2/cat22/cat221/cid483.html
②保険診療(健康保険)外の費用がある場合
医療費通知情報は、健康保険の対象として自己負担分を支払ったものが反映されます。そのため、医療費控除の対象とはなるものの、健康保険では対象とならない費用はマイナポータル連携で自動取得することはできません。
例えば、「松葉づえ」や「コルセット」、「公共交通機関の料金」などは、医療費控除の対象になる場合でも、マイナポータル連携で反映させることはできません。
③保存期間は3年まで
医療費通知情報がマイナポータルに保存されるのは、過去3年分のみとされています。ご自身の医療費の推移を知りたい場合など、3年より前の情報を参照したいという人は領収書を手元に残しておくことが必要になります。
まとめ
医療費控除の手続きは、従来は控除対象となる医療費を計算して入力する作業が必要でしたが、マイナポータル連携によってかなりの手間が削減できます。また、領収書を5年間保管する義務がなくなることで、部屋のスペースを圧迫せずに済みます。マイナンバーカードをすでに持っている人なら簡単に始められるので、この機会に試してみてはいかがでしょうか。