ゴールは、まだ見えないけど

高校最後の夏の大会。
翔太が所属するサッカー部は、優勝候補に挙げられていた。
しかし、翔太は大事な試合でミスをしてしまい、チームは敗れてしまう。
チームメイトが帰り支度をしている中、控室の中で1人動かず同じ言葉をつぶやいている…。
「俺のせいで…」
翔太は、責任を感じて深く落ち込んだ。
周りから見れば、決して翔太一人のミスでないことは明らか。
幾重もの偶然が生んだ偶発的なミスで、その主役が偶然翔太だっただけなのだ。
きっと、誰が主役になっても同じ結果になるであろうそのミスを、重く捉えているだけだった。
そんな雰囲気を察してか、チームメイトたちも声をかけにくくなっていた。
そして、しばらくときがったった。
最終試合だったこともあって、夕陽が差し込むような明るさになっていた。
「………」
帰り支度は終えたものの足取りが重く、動こうという気持ちにはなれないでいた。
チームメイトから翔太の心境を聞いた幼馴染の女の子が迎えに来た。
「翔太君…」
責任を感じすぎていると一目見て悟った遥は、それ以上言葉を続けようとはしなかった。
一緒に過ごした時間が長い分、気持ちが良く解るのだ。
そして翔太がどれだけサッカーに励んできたのかも、知っている。
今は顔を上げようとしない翔太の前でしゃがみこみ覗き込むように見上げる。
「あなた、一人の責任じゃないよ…」
「………」
「チームメイトみんなで頑張った結果じゃない…」
「………」
「あなたの夢は、この試合の負け一つで輝きを失うものなの?」
「………」
「ね? みんなと帰ろう?」
そんな翔太を、遥はいつもと変わらずに応援していた。
責任感を人一倍抱いてしまう悪い癖を発揮しているなと、遥は感じていた。
「翔太くん、諦めないで。あなたの夢が叶うまで、ずっと応援しています」
遥の言葉に、翔太は励まされる。
しかし、それでもなかなか立ち直ることができなかった。
顔を上げることができなかった。
今までとは違う状況に遥が困っていると、通路から誰かが走ってくる足音がした。
控室に入ってくると、遥と目が合った。
「あ!? 遥ちゃん…」
「健太君…。ちょっと、難しい状態かな…」
「やっぱりか…」
「女の私じゃ、だめみたい…」
翔太の状態に見かねたチームメイトの健太が声をかけた。
「翔太、お前ならまだ間に合う。最後まで諦めるな」
「………」
「俺も学生の間は付き合ってやるからさ。なっ!」
「………」
「いつまでも腐ってると、夢に見放されて、遥ちゃんにも嫌われるぞ」
「…はは。なんだよ、それ…」
健太の言葉に、翔太は再び夢に向かって走り出すことを決意する。
それからの翔太は、人一倍練習に励んだ。
卒業後は親の家業を継ぐことになっている健太も、その練習に毎日のように付き合った。
二人揃ってプレイできる時間は限られているのだから、熱量が増した。
数か月後…。
そして、ついに最後のチャンスとなる全国大会の地区予選が始まる。
翔太は、今まで支えてくれた人達への感謝の気持ちを胸に試合へと臨む。
翔太の夢はプロのサッカー選手になるという、子供のころからの夢。
無心に追いかけて、初めての挫折も味わった。
地区予選会場に入る前に、遥と健太に思いを告げる。
「遥、健太。本当にありがとうな」
「何をいまさら言ってるんだか。なんだかんだで、ここまでやってきたんだろうが」
「そうよ、幼馴染三人で支えあってきたん仲じゃない」
「翔太、俺はこの大会を最後に引退となるけど、お前は俺の分の夢も繋いでくれ」
「ああ! 俺はもうへこたれない。前だけを向いてかなえてみせるさ」
「翔太、もう一度だけ言わせて…」
男二人が熱くなっている中、遥が恥ずかしそうに頬を染めている。
その様子を見て一瞬で悟った健太が、控室へと駆け出して行った。
「なんだ? あいつは?」
「あはは。幼馴染なのに悟れないなんて、私は苦労しそうだな…」
と、苦笑いを見せた後、遥は表情を切り替え、まっすぐに翔太を見つめた。
ずっと見ていたからこそ、理解できる想い。
そして、本当のことを伝えてはいけない切ない思い。
そんな二つの想いを乗せて、あの日も口にした言葉を再び翔太に言った。
「あなたの夢が叶うまで、ずっと応援しています」
 

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1ヶ月ぶりのジェミニ先生との合作小説となります。

今回は7割もの量に赤ペンを入れてしまいました(;^_^A

設定とテーマだけをジェミニ先生に伝えて、制作された文章においらが加筆・修正を加える個人的な楽しみ方ですね。

今回は青春ものにしてみました。

短編なので挫折と立ち直りを急展開で仕上げてみましたがいかがでしょうか?

登場人物の名前と人数はジェミニ先生に任せたのですが、なかなか役割が決まっていていいですね。

短編を書くときは多くても3人がちょうどよいくらいです。

ジェミニ先生、意外と青春ものは得意としていますよ。

ただ、物語が急展開することが多いのでつなぎの文章加筆補正は必要ですけどね。