その老人は公園をかわいいと言った


若輩者の私はその真意を測りかねた




夜の公園の薄暗い電灯の下で


顎鬚をたくわえた痩せた老人を見つけた



普段、知らない人に声をかけたりしないが


その夜はグッと冷え込んでいて


薄着でベンチに座っている老人に


思わず声をかけてしまったのだった



その老人の


深い群青色の瞳を見つめると


自分が夜の大海原に浮かぶ小舟に乗って


見渡す限り何も無い場所で


波に揺すられている


そんな錯覚を覚えた



私は波の上でどうしたらいいか途方にくれ


小舟の上から身を乗り出して下を覗き込んだ



その拍子に舟が傾いて


私はあやうく小舟から


落ちてしまうところだった


私はその場に座り込んで舟にしがみついた



すると


誰かが私の背中を抱えて


だいじょうぶかと聞いた



私は驚いて振り返った


その瞬間、公園に大勢の人がいる映像が


ほんの一瞬だけ見えた



何か大きな災害でもあって


避難してきた人たちが


集まっている様に見えた



その映像はすぐに色が消えて


真っ白な光の中に飲み込まれて行った




携帯の着信音で目が覚めた



運転していたらあまりに眠くて


公園の脇に車を停めて


少し休もうとしたところまでの


記憶しか無かった



私は寝ぼけ眼で


かわいい公園を見つめた