その日僕は犬を連れて
公園を散歩していたはずだった
何故なら手にリードを持って
ベンチに座っていたから
ふと目の前の砂っぽい地面に
細波が立っているような変な感じがして
目頭をちょっとキツくつまんでから
もう一度地面を見てみた
すると
一艘の小舟が砂の上を滑る様に近づいて来た
僕は驚いて思わずベンチから立ち上がった
小舟にはさっきまで一緒に
公園を散歩していた犬が乗っていて
こっちを見ながら盛んに尻尾を振っている
それでこれはきっと
夢なんだろうと気付いたんだ
夢ならば何も恐れる事はない
僕は小舟に飛び乗って
犬の頭を一度、わしゃわしゃしてから
横に座らせて
一緒に砂の上を滑る様に進んで行った
やがて石に貼り付いたまま乾いた
川藻の匂いの混ざった風を感じると
砂は水面に姿を変え
後ろに酷く懐かしい人の気配を感じた
少年の頃
ひと夏の間に川漁師の仕事を
ひと通り教えてくれた近所のお兄さん
川底に竿をさしてぐんぐんと舟を進めて行く
人生で最も濃い夏の記憶と
相棒の犬を乗せた舟は
小さな公園をスイスイと走り回る
なんて楽しい夢なのか
こんな夢が見れるなら
人生がたとえ一瞬でもかまわないさ

