ある日、吉田孝司が公園のベンチに座って
ふと上を見上げると
小さな公園には不釣り合いな大きめの木の
てっぺんに近いあたりに
黄色い瓢箪の様なものがぶら下がっていた
吉田は鞄から車の運転の時に使う
眼鏡を取り出してその物体をよくみてみたが
花梨の実の様な瓢箪の実の様な
とにかくそれを何かと断定するには
吉田の視力は弱すぎた
その日から吉田は公園に寄った際に
その実の様なものを見上げるのが習慣になった
日増しに寒さが厳しくなって行く季節
公園の木には
もうほとんど葉が残っておらず
丸裸の木のてっぺん辺りに
黄色い実は寂しくぶら下がっていた
イブの夜
吉田は仕事帰りにコンビニで買った
酒とつまみを入れたビニール袋を脇に置いて
薄暗い公園のベンチに座って上を見上げていた
今日は帰社する際に酷い渋滞に巻き込まれて
いつもは15分の道に小一時間もかかって
帰りがすっかり遅くなってしまった
通り沿いにケンタッキーがあるのを
すっかり忘れていた
公園の近くにある塾の帰りか
吉田の横を傘をさした子どもたちが
何人か急ぎ足で通り過ぎて行く
まだサンタさんを信じていても
良さそうな年頃なのに
お受験も大変だなと
独り身の吉田は他人事の様に
ちょっとだけ一人ごちた
やがてちょっと冷え込んできたと思ったら
小雨はみぞれに変わっていた
まつ毛についたみぞれの冷たさに
吉田が思わず立ち上がると
目の前の木の実が明るく光っていた
次の瞬間
暗がりから明るい黄色い実が次々と
浮かび上がって裸の木を彩って行った
そうか
そうだったのか
上ばっかりみてて気付かなかったが
木の下から伸びたコードが
近所の家の窓から繋がっていた
吉田は顔が濡れるのもかまわず
誰かの悪戯のイルミネーションを見上げた

