勘弁してくれよ
日曜日の朝
田澤孝介がいつものように電車で通勤していたら
隣に年齢不詳の長髪の男
髭も伸びている
それだけなら何の問題もない
問題なのはそのあまりの息のニンニク臭さ
ついさっきまで
ニンニクたっぷりの焼肉かラーメンでも
かっこんでいたような臭い
しかも日曜日の朝のガラガラに空いている
電車の中で何故、隣に座ってくるのか
孝介はすぐさまそこで
席を移動しようと思ったが
ちょっと待てよ
この変なやつの気に触ったら
それこそ何をされるかわからない
敢えて時給が少し高く
仕事も立て込んでない確率が高い
日曜日出勤を選んでいるのに
それはないぜと孝介は
隣の男をそれとなく見つめる
しかし
慣れとは恐ろしいもので
しばらく電車に揺られていると
孝介は隣の男の事を
無視できるようになって来た
Bluetoothのイヤホンを耳に突っ込んで
音楽を聴いているふりをしているが
音は鳴っていない
ただ目を閉じて目的の駅まで
この苦痛に耐えていればそれで良かった
はずだった
次に目を開けた時
孝介は真っ白な見知らぬ場所にいた
ここは何処だ?
あの男は何処へ行った?
俺はいったいどうなった?
何も見えない真っ白な世界の中に
芳ばしいガーリックの臭いだけが漂っていた

