発情期でもないのに



猫の大げさな唸り声で目が覚めた




早朝5時前 


キジラが何か騒いでいるので


部屋の前に出ると山崎さんが



部屋から出た所でうずくまっていた




何か尋常じゃない感じ



背中が痛いと身振り手振りで訴えている



僕は慌てて119番に電話したけれど



よく考えてみれば



ここは道が悪くて


救急車が近くまで来れない場所



僕は大家さんに連絡して


トラクターを出してもらい


荷台に山崎さんを座らせてバス停まで運んで



そこから救急車で



街の病院まで搬送してもらった




翌日



夫婦で病院にお見舞いに行った



山崎さんは腎臓結石だった




病人のくせになんか妙に血色がいい



山崎さんが救急車で運ばれた病院は



彼の娘さんが勤めている病院で



彼女の顔を見た途端


山崎さんは石の事などケロッと忘れて


元気になってしまったようだ




とにかく石が出るまでは水分を摂るようにと


医師に言われた山崎さんは


病院を抜け出して


その近くの角打ちの出来る酒屋で


ビールを一気飲みしたら


あっさり石が出て来て治ったと言い


さっきまでの激痛が嘘のようだと言って笑った




それが山崎さんと会った最後の日だった




すぐに退院するはずが



検査で見つかったのは



石だけでは無かったみたいで


そのまましばらく病院に留まって



ひと月もしないうちに



部屋の片付けをしたいと



娘さんが挨拶に来られて



僕らはその重大な事を知った



キジラは本当は僕らより大家さんより誰よりも



山崎さんが好きだったみたいで



僕らの部屋には寄り付かず



いつも山崎さんの部屋のベランダで



中の様子を伺っては



時折ニャーと鳴いた