ある日


高校時代からの付き合いの山根さんと


彼女の家の近所で会って


お茶でもしようと言う話になり


京子が隣町を訪ねた時のこと


目的の喫茶店に随分と


早く着いてしまった京子は


すぐに中に入らずに


しばらくその辺を歩き回ってみた



喫茶店のまわりは古風な住宅街で


今時の規格の揃った分譲住宅ではなく


古民家や洋風の天井の高い家など


どれも立派で大きな家が並んでいて


まるで避暑地の様だと見惚れているうちに


思いがけず京子はちょっと遠くまで


歩いて行ってしまった



すると


白い壁の大きな家の庭先が目に入ってきた



陽だまりにテーブルとデッキチェアが


ポツンと置かれていてその上を


紋白蝶がふわふわ漂っている



まるで蝶の羽音が聞こえそうなくらい


静かな光景



初めてきた場所なのに妙に既視感があって


京子はしばらくそこに佇んで庭を眺めた



山根さんと他愛も無い話をしている間も


京子はずっとその光景が頭から離れなかった


自分の大事な記憶と結び付く何かを


そこに感じていたから



大きないびきの音で目が覚めた


京子は隣で寝ている夫の鼻を摘んで


音が止まるかどうか試してみたが


今度は口から大きな音が漏れてきた



笑いを堪えながらその顔を見てる時


不意に昨日見た静かな庭の光景が蘇ってきた


遥か昔 子供の頃


そんな静かな庭で


随分年上のお兄さんに


おままごとの相手をしてもらった事が


あったような無かったような



京子はなんとなく照れ隠しに


もう一度夫の鼻を摘んだ