ほんの偶然だった


清水弥生が公園の木に手をついた瞬間


ただの木のはずが、葉書2枚分の面積が


くるっと反転して


仏像がお出ましになった




歯を磨きながら寝ぼけ頭で


その夢の場面を反芻する



母親に急かされ


味噌汁に口をつけて


珍しくご飯では無く


用意されていたトーストを


口に咥えて弥生は家を飛びだした



学校への道のりの途中


公園の中で


夢に出て来た木を触ってみる



すると本当に


木がくるっと反転して


穏やかな顔の仏像が出てきた



弥生は仏像を元通りにひっくり返し


辺りに人の気配が無いのを確認して


急いでその場を離れた




その日の授業はうわの空だった


夕方まで何をしていたか殆ど記憶にない



それで


日本史の授業の終礼に


自分だけうとうとしてて立ち上がれずに


先生とクラスメイトの視線が


矢のように降り注いでいる




弥生は教科書の仏像の写真を


助けを求める様に見つめた